アガサ・クリスティの原作が名作なのだから、そりゃ面白い。でも一体何の為に作ったのかわからない作品だった。
この作品はシドニー・ルメット監督が1974年に素晴らしい映画を作っているが、今回はその作品を超えない。演出も演技も二番煎じになってしまっている。時代に合わせた作品になっているとも感じられず、ケネス・ブラナーの懐古趣味によって、監督俺。主演俺。で作られてしまった。
もし今作に何か意味があるとすれば、アルバート・フィニーやイングリッド・バーグマンやアンソニー・パーキンスを知らない若い世代がジョニー・デップやデイジー・リドリー目当てで観に来て、アガサ・クリスティや1974年版に興味を持ってくれることにあるのだろう。
とは言えやっぱりつまらない訳ではないので、意味とかつべこべ言わず楽しめればそれでいい。三谷幸喜だった気がするが、日本でドラマ化した際はあまりに軽薄な雰囲気と演技に辟易とし、原作と1974年版のファンである僕は「こんなんオリエント急行じゃないよ〜」と思ったもんだが、今回はちゃんと原作に対する敬意があり、その面は非常に評価できると思った。