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オリエント急行殺人事件のSyoCINEMAのレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
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原作を読んでいるかどうか、過去の映画作品を見ているかどうか、で評価が変わりそうな作品だけど、自分は本作で初めてこの物語に触れた。その上で感じたこと。

本作は、ミステリーの形をとった成長物語だ。であると同時に、ポアロを主人公としたスーパーヒーロー映画だと思う。僕はそこが最大の特長だと感じた。

ケネス・ブラナーは演出家で俳優で監督だ。クリストファー・ノーランと熱い演劇論を交わせるような、そんな才人だ。これまでに彼は、「古典を現代アレンジする」ということをずっとやってきた。「ハムレット」しかり「シンデレラ」しかり、「マイティ・ソー」もそうかもしれない。

彼はいつも「作品を知らない現代の人々に見せる」ことを意識しているように思える。僕はそこが彼の格好いいところだと感じていて、今回もその辺りに注目して見た。

ミステリーとしては、最後にあっと驚く仕掛けがあるものの、謎解きにカタルシスがあるかといったらそうではないと思う。じゃあ何が楽しいかというと、僕にとっては未熟だった天才が成長していく過程が面白かった。ちょうど「スパイダーマン:ホームカミング」を見たときのような感覚だ。

力が先行しがちな主人公が、心の成長を遂げて真のヒーローへと覚醒する。
本作は、これから始まるケネス版ポアロシリーズの顔見せであり、そういう意味でヒーロー映画の構造にすごく似ている。そしてそれは、現代の若い世代のニーズに合ったつくりだと思う。その辺りの嗅覚は、さすがケネスだ。演出も手堅く、優等生的で外さない。そつがないけど嫌味もない。エレガントな作品作りを行う人だと思う。

だから、本作は「アガサ・クリスティの原作を完全映画化!」というよりも、「ポアロシリーズが始まるぞ!」って感じだ。キャラもの、ヒーロー映画としての側面が強く、事件よりもキャラを描く割合が強い。

でも考えればこれも納得で、「SHERLOCK」の成功もやっぱりキャラの面白さにあると思うし、すごく時代に即した措置だ。イメージ的には、ロバート・ダウニー・Jr.の主演作に近い。「アイアンマン」「シャーロック・ホームズ」、今度はドリトル先生。これらの作品は、俳優としての魅力がまずあって、キャラが突飛で面白い、ってのが大きい。今回もそんな感じで、ケネスがやるポアロを好きかどうか、そういう選択を観客がする作品だと思う。

その辺りの捉え方で、本作の見え方はかなり変わってくる気がする。若者により受けているように見えるのも、この辺りが反映されているのかもしれない。