Aria

オリエント急行殺人事件のAriaのレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
4.5

"現代のオリエント急行"
だと思いました。

原作ともシドニールメット版とも
異なるエンディングは
確実に、現代の価値観が
反映されていました。

散々揉まれたこの作品を
今、新しく作り出す意味。

終盤のポアロを見ていたら
その理由が分かります。



言わずと知れた名作ミステリー
1974年にはシドニールメット監督の映画が公開され
こちらも名作と言われている。
海外ではドラマ化もされ、日本国内でも
野村萬斎主演でドラマ化されている。


長く、世界中で愛される理由は
ただの殺人事件で終わらない
感情を揺さぶられる物語だからです。


これまでに映像化された
オリエント急行殺人事件とは違う
その見せ方に圧倒させられました。














※以下ネタバレを含む感想です。
ご注意願います。




-----------------------------






◼️ポアロの苦悩と揺らぎ


「この世の中は善と悪で分かれていて
中間などない」

冒頭の事件の最後に
ポアロが言うセリフ。

序盤での卵のサイズのこだわりや
片足でうんちを踏んだらもう片方も、
などの描写からポアロの性格が見えてくる。

物事をはっきりとさせたがる性格
信念をしっかりと持ち、
それに従って行動する人物。


しかし、その一本の芯は
今回の事件で大きく揺らぐ。

悪によって人生を壊された狂わされた
善の人々

いつものポアロならば
殺しは殺しだと、一刀両断するところですが…

被害者家族たちの悲惨な出来事を
知っている

ポアロの元にはアームストロングからの
捜査依頼が来ていたが
依頼が早く届いていれば
多くの人が死に追いやられる事は無かった。

そして、列車内では
ラチェットに護衛を依頼されたが断った。

依頼を受けていればラチェットの列車内での
死は免れたし12人が殺人を犯す事は無かった。

ポアロは少なからず2回
この悲惨な事件を回避するチャンスが
あったのです。

ポアロは自責の念にかられると同時に
探偵ポアロとしての完璧なバランスを
壊したく無いという思いもありました。

最終的に選んだ答えは第1の推理
何者かが列車に忍び込み殺害後
列車を降りたというもの。

可能性があり得る推理を選び
探偵ポアロの信念と
被害者遺族たちの気持ち
両方を汲み取った素晴らしい選択だと

シドニー版では大団円のような形で
幕を閉じます。

しかし、今回は
事件を解決し終えたポアロの表情は暗く
また、駅を降りてからの足取りも重い。

あいも変わらず駅員のネクタイの歪みを指摘してこだわりを見せるポアロだが
作品冒頭でも言った「完璧だ」が
言えなくなっていた。

彼の完璧主義はこの事件で
打ち砕かれたし、自分の正しさに
自身を無くしているようだった。

このラストシーンは
あの決断は果たして正しかったのか
何を以って善と悪とするのか
を考える余韻を残していました。


現代のオリエント急行として
素晴らしい終わりでした。
Aria

Aria