翼

オリエント急行殺人事件の翼のネタバレレビュー・内容・結末

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

このスコアには個人的な想いが入っている。

アガサ・クリスティの推理小説には、複雑なトリックや大掛かりな仕掛けは登場しない。
「何故、殺したか」
その心情、その決断に至った動機が全て。
そしてその心理こそが推理の迷宮となり、解き明かされた時には心が通ったかのような不思議な充足感・爽快感・そして移入した感情による喪失感が残る。

小説のファンであった分、原作との乖離による緊張感があったが、同じ読後感があった。



1930年代という極めて階級格差が激しい時代に、役職も人種も異なる10名の哀しみに暮れる人々が、復讐という目的のもとに静かに集う。
小さな命を失った彼らの心情を想像するだけで、その静寂と覚悟を感じる。

全員が犯人でありながら、「ここに殺人者はいない」と締めくくる。
粋だ。
翼