ぬーたん

オリエント急行殺人事件のぬーたんのレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
2.8
大好きなクリスティーの原作本。74年に名作があるのによくまあリメイクしたもんだと思いつつ、気になるから一応観てみたよ。
74年版がグッと心に来たのは、乗客とその背景の物語を前面に出し、ポアロが控えめだったからだ。
数年前のドラマ版はポアロの苦悩がテーマになり、暗くてがっかりしたが、あのデヴィッド・スーシェのハゲとヒゲに免じて許した(笑)
そして今作はそのドラマ版に近いポアロの独壇場だ。
豪華キャストと美しい映像が印象に残った。
というかそれのみ!今作からスタートした人はまあ満足するかもしれないが、オールドファンのジジババは納得いかないと思う。
監督・主役のポアロにケネス・ブラナー。
どちらも今一つだったが、ナント続編が決定したそうで!
これは若いファンを掴んだのかもね。
ストーリーは絶対的に面白いし、豪華な俳優陣だし、興行的にも良かったのだろう。
前作と比べてみよう。
ポアロはスーシェの仕草や雰囲気がピタッと合ってしまっているので、ブラナーはかっこ良過ぎる。
前作のアルバート・フィニーは前面に出ない作りだったせいもあり、違和感はなかった。
ブラナーちゃんは背が高いしスリム、動きが普通過ぎる。
顎髭の形が気持ち悪かった。
ラチェットをジョニー・デップ。
カッコいいよね。悪役としては薄い感じ。心底のワルに見えないところがあるね。
前作は悪役で有名なリチャード・ウィドマーク。
根っからのワルという感じで迫力あった。
ラチェットの秘書ヘクターをジョシュ・ギャッド。
ずる賢そうな雰囲気が出ていた。
前作ではアンソニー・パーキンス。
『サイコ』の主役で気味の悪い役が得意だが、線が細くミステリアスな俳優だった。
当人は60歳でエイズで死去。奥さんは9.11テロで貿易センターに最初に突っ込んだ飛行機に乗っていた。
ラチェットの執事をデレク・ジャコビ。
79歳だが元気。12年前に男性と結婚したそうだ。
前作ではジョン・ギールグッドが演じ英国アカデミー助演男優賞。
アーバスノット大佐は黒人が演じているが、前作ではショーン・コネリー。
コネリーはカッコ良かったなあ!
侯爵夫人はジュディ・デンチ。
迫力あるし上手い。
前作の女優はもっと怖い顔で喋り方が印象的だった。この役は引き分けという感じかな。
ハバード夫人はミシェル・ファイファー。
美しさは健在だが、流石にジョニデにナンパされるというのは無理があるかな。
ウィリアム・デフォー、ペネロペ・クロスは顔が濃い!
演技も大げさに見えるが存在感はあるね。
ただ、一人一人のじっくりとした尋問が省略されていて、ゆっくりと化けの皮が剥がれるという楽しさもなく、最終的には誰が誰だっけ?と思う程、それぞれが印象に残らずに終わってしまう。
だから感情移入もないし、その想いを汲めずに前作のように心にグっと来て泣けることもなかった。
時々、何でかな、ちょっと恥ずかしいような気持ちになることがあって、観終えるまでが長くキツかった。

汽車の走る風景・汽車内の雰囲気、衣装。
映像が美しく、印象に残る。
効果音などは弱くサスペンスっぽい盛り上がりがあまりない。
サスペンスなのでネタバレは書けないが、あっさりというよりは、結局はポアロを描いた作品だなという感想。
余韻が薄いのは、最後に乗客を主役にしなかったから。
ポアロが良い所を持って行った、監督自ら。
続編への布石に走ったな、という嫌な印象が残った。
リメイクした意味はあるとは思えないが、45年も経って新しいファンを掴んだという意味では成功なのかしら?
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