JunIwaoka

誕生のゆくえのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

誕生のゆくえ(2016年製作の映画)
3.0
2016.10.28 @ 第29回東京国際映画祭

ありふれた夫婦の会話の応報がやがてスリリングに展開する濃厚なドラマというと、ここ数年のイランを代表とする特徴的な映画。真綿で締めつけるような緊張感や国を越えて共感してしまうすれ違いの歯がゆさは、他国ではなかなか真似して描くことのできない。けれどそれは「別離」が与えた影響が大きすぎてなんだか見飽きてしまったというのが正直な感想。
忙しなく仕事(夢?)に打ち込む夫婦の望まなかった妊娠。宗教的にも法的にも中絶が禁止されている国でめぐる誕生のゆくえ。端的にいうとイランまで男の間抜けさを描いてまして、目覚めていく母性に決断出来ずにいる妻と「俺の人生は誰にも邪魔させない」というセリフに表されるように犠牲として捉える夫の違い。
すれ違う夫婦間がいかに悪化していっても、気ままな息子を構ってやったり、人生それだけじゃないところがリアリティがあって面白かった。特に息子たちが撮るPharrell WilliamsのHappyのPVがユニークで、制欲的ではない現在のイラン社会を象徴していて、そのギャップに揺れる世代なんだろうな。
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