きよみず

誕生のゆくえのきよみずのレビュー・感想・評価

誕生のゆくえ(2016年製作の映画)
3.2
東京国際映画祭1本目はイラン映画。

2人目の子供を中絶するはずだった夫婦が、それをきっかけに歯車が噛み合わなくなっていく物語。

最近のイラン映画の特徴なのか会話がストーリーを牽引していく箇所が今作でも多々あり、特にクライマックスに感じた夫婦と義理の父での三つ巴のシーンの勢いには圧倒された。
イランでは最近車中での会話が増えているらしく、大事なことはだいたい車の中で話される点も印象的だった。

見る前に知っておきたいのは、イランでは法律上、宗教上ともに中絶が禁止されていること。それでも中絶をするのかしないのか、ティーネイジではなくすでに子を持つ夫婦という点が、より一層一筋縄でいかない要因だった。

卵と鳥は同じなのかという問いには思わずはっとしたが、社会を映し映画を製作してきた夫は、少なからず責任を自分に感じていることを監督の口から聞いたときは、それ以上にああなるほどなと裏付けされた説得力を感じた。

強引すぎるなと感じる夫にも子供と接する優しい父親としての側面が描かれていて、どちらがどうっていう価値観の押し付けがないし、あの一人息子の存在がシリアスで重いだけの映画になっていなかった。
きよみず

きよみず