フィリピンのゲイ・ミスコン参加者の半生を描くお話。また、「彼女」を取り巻く親友や娘、家族や恋人たちの群像劇でもある。
以前マニラ近くに数カ月滞在した経験があるので、フィリピンに対しては少なからず思い入れがある。劇中に出てくる食べ物や、トライシクルという３輪の近距離タクシー、ジプニーというワゴンをバカでかくしたような乗り物、そういうのを久しぶりに見れたのも含めて観賞していて楽しかった。
フィリピンでのゲイの位置付けは日本とかなり異なり、生活の中で身近に存在しているもの。例えば、日本人の友達がスポーツジムに行ったら、地元のゲイの人にナンパされた、というのがよくある話だったり。ゲイであることがオープンにできる環境。
その一方で、フィリピン人は非常に信仰心が篤く、キリスト教会が同性愛を認めていないために、微妙な感情が存在するのも確かで。その辺りの複雑な状況はこの映画を通して伺い知ることができる。
また、そういった「知る面白さ」だけではなく、主人公の美しさを追求する女性性や家族の葛藤などは普遍的なもので、だからこそ純粋なドラマとしての質も高くなっている。この映画の技術面での特徴である時系列を複雑にする演出は、ストーリーの進行とともに登場人物の背景が明らかになってくる点でとても上手く作用している。
この作品全体を彩るメイクや衣装、また、それを写真に撮ってFacebookにアップする人たち、そんな姿がとても明るく楽しくいい加減で優しいフィリピンらしい姿だなと思った。
