るる

ダイ・ビューティフルのるるのネタバレレビュー・内容・結末

ダイ・ビューティフル(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

子供がセクシーな格好してコケティッシュな色気を振りまいてる姿を見るとちょっと不安になるな、えっこのこ難病かなにかなの、ドキュメンタリー? ちょっと悪趣味な予告編だな、と思ってたら本篇始まってた、慌てて巻き戻した、日本のセクシーといえば芸者なのか、日本の芸者といえばセクシーなのか、とか。思ったりしつつ。

トランスジェンダー、ドラァグクイーンの文脈、と思うと、こういう冒頭でも納得いくあたり、なんかちょっと非対称性?自分の中に曖昧な線引き?があるような気がしないでもない、女の子がセクシーな女を目指してると気持ちわかるけど世間はクソだから気をつけてねと心配になる、でも女の子に憧れる男の子なら頑張れと納得いってしまうあたり…
まあでもフィリピンだしな、南国だし、とか。フィリピンは基本的にゲイフレンドリーなんだっけ、インドのトランスジェンダーは基本的にアウトカーストで宗教的儀礼に関わるか、娼婦になることが多いらしいけど…とか、色々。よぎりつつ。

化粧品のアップから始まり、それが死化粧とわかる、よい。
駆けつけた娘のTシャツ、レインボーなの、わかりやすいな、とか、フィリピンにもレインボーカラーって浸透してるんだな、とか。日本ってまだそんなに、じゃない? どうなんだろ。引き取る時もレインボーカラーのTシャツ着てた娘ちゃん、あざとさは感じつつ、
「ゲイは養子を取ったほうがいい、老後の世話をさせる」「そういうんしゃない」とか、あるあるを踏まえつつ、否定、丁寧。
母親がオカマだと、娘はからかわれてる、うーん。でも先生はちゃんとしてるのね「子供を産んだら母親になるってわけじゃない」良かったね。

そういう、なんだろ、トランスジェンダーから連想される文脈? 前提?から、娘はミスコン女王なんかになりたくない、という話につながっていくの、良いな、って。ドラァグクイーンになりたいトランスジェンダーばかりじゃないし、オシャレに興味ある女の子ばかりじゃないということも、ちゃんと。すげえ考えて作られてる、すごい…

時系列バラバラ、結構脈絡なく話が飛ぶように感じて、最初戸惑ったんだけど、この順番しかなかったなとわかっていく、パトリックことトリシャの幼少期から順番に語っていくんじゃダメだった。でもやっぱりちょっと目まぐるしかったような。

子役たちは多分そんなに上手じゃないと思うんだけど、可愛らしかったね、

タガログ語と英語交じり、新鮮だったな

高校時代からこんな親友がいるって最高だなって。バーブスのおうちは寛容でいいなとか。カラフル。

フランクな葬式、いいな。と思ってたら経営者がなかなかぶっとんでる。彼の生き方にバーブスがちょっと引いてるあたり良かった、一緒くたにしない描き方…

金持ちの家が悪いんじゃなくて、家父長制が悪いんだなとしみじみ。そして金持ちの家には家父長制が残ってる家が多いことを思ったり。マジクソだな。フィリピンってカトリックの影響が強いところでもあるのね、なるほど…

立ち上がるとスカートをはいていたとわかる、カミングアウトしてる、父親はイラついてる、その理由、うまいな。

ミスコンが商売になっている文化の奇妙さがどんどん明らかにされるつくり、ほんとよくできてると思う。アドバイザーのおばちゃんの存在も、ちゃんと。ミス・ユニバースとかホント不思議な文化よな…
ベネズエラ代表がまたしても、って面白かったし、たったひとつだけ解答を覚えていたあの質問に答えてミス・ゲイ・フィリピーナとして優勝、ってのも良かった。

ブリトニー・スピアーズ風メイク、めちゃくちゃ似てたな…

レイプされるゲイ、トランスジェンダー、男、についてもちゃんと…つらすぎ…抵抗しなかった、できなかったことを悔やむレイプ被害者を描いてくれてありがとう…腹くだして胃腸炎で入院したってことは、うわあ最低、さいあくだな…と思ってたら医者が親にバラしてしまう、でもまあ未成年か、なら保護者に告げないわけには、しかし、さいあくだな、カミングアウトしてなかったらアウティングだし…

父親なりに心配してるんだろうけど、悪いのは加害者なのに、という、オカマだから酷い目にあうんじゃねえから、ていう、その前提はきっと共有されていない、つらい…MtFが嫌がられるのって、やっぱり女性差別が存在してるからだと思うんだよな…根本的に女性を見下してるから女々しいことが許せないんだろうな…

日本で美容整形してるからミスコンで有利、そうなの?なんて。日本って東南アジアからはまだまだ信頼あるんだな…

口説かれて、僕らは同性だ、と答えちゃうイケメン手術助手、なんか不安になるな…美容整形外科に勤めてるからってゲイフレンドリーってわけじゃない、

というか、ゲイフレンドリーってなんだ?という話でもあるよね。ゲイフレンドリーな国と言いつつ、実態は全然そうじゃないぞ、っていう、日本もそうだよな…

ドレスにハサミ、良かったな。映画的!と思った。その直後、「美人なニューハーフね」「彼女は本物の女よ」ってやりとりとか。ちょっと皮肉。

オカマとニューハーフを使い分けてる翻訳字幕、日本にもいろんな言葉があるよな、とか。

ストリッパーの彼氏の次はジェシー、あの出会い素敵だったな、トリシャの赤毛似合ってた、しかし不倫かよ、大丈夫か、と思っていたら。

ジェシーの正体、きっついな、でもレイプ加害者が罪悪感に襲われて、合意のセックスをすることで過去を帳消しにしたいと望む心理はなんとなくわかる気がする…レイプ加害者と被害者が恋に落ちる、落ちたと思い込む、責任をとる、って現実にあるわけで…DVとも通ずると思うんだけど、双方にあると思うんだよな、暴力的なセックスがあった事実をなかったことにして正当化したい心理…"失敗"を上書きしたい気持ち…

白血病で病床にありながら懺悔するジェシー、ずるいよな、許されたかったんだろうなって。それでもジェシーの涙、愛してるという言葉は本物だったと信じたい、そしてたとえ本物だったとしても、ジェシーを拒絶したトリシャは悪くないと思うのね…当然の拒否反応だと思う…はたして天国で再会してるかといえば、怪しいと思うんだけどな、どうだろうな…

そして、鏡の前で語られた約束、優勝できたら死んでもいい、その言葉通りに…神様にもらった身体をこんなに素敵にしてやったわ!と笑ってやる、最高だな…

相変わらず恐ろしい父親、和解することはなく…なんだかな…姉は大丈夫だったのか…

最後のメイク、どんな、と思ってたんだけど。娘ちゃんがフェードアウトしちゃったのはちょっと残念だったんだけど。

最後のナレーション、冒頭のリフレイン、ボディブローのように効いた。ミスコン出場者は質疑応答の想定質問を勉強して、心にもないことを言ってみせる。家族のおかげ、家族に感謝、すんごい皮肉、でも、ほんのちょっとだけ真実が含まれている、あの感じ、凄かった。

ちょっと放心してしまった。初フィリピン映画…凄かった。
るる

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