Inagaquilala

フィクサーのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

フィクサー(2016年製作の映画)
3.6
東京国際映画祭のコンペティション部門にエントリーしていた作品。ルーマニアとフランスの合作映画だが、舞台はルーマニアだ。

首都ブカレストのAFPで取材の手伝いをしている主人公(これをフィクサーと呼んでいるのだが、日本の感覚だとコーディネーターに近い)、パリから売春で強制送還されてきた14歳の少女を追いかけるのだが、教会が彼女をガードしていて、なかなか接触できない。

政府の要職にある親族のツテをたどってようやくインタビューが取れそうになったため、フランス本国から取材クルーを呼ぶが、目当ての少女の前にはまたも厚い壁が立ちはだかる。なんとかスクープをものにして、正式にAFPで働くことを望んでいる主人公だったが……。

ファーストシーンはブカレスト市内のプールから始まる。そこで泳ぐ少年をカメラで追う主人公。少年は主人公が同居する恋人の息子なのだ。だが、少年と主人公の折り合いはあまりうまくいっていない。

作品はこの主人公の私的事情とフィクサーとしての仕事を重ね合わせながら、彼の日常を描いていくのだが、それがやや牽強付会な感じがしないでもない。

かたや少女、かたや少年、主人公がかかわるふたりの未成年者、たぶん虐待をテーマにして作品を組み立てようとしたのだろうが、ややエピソードは噛み合っていないようにも見えた。

丁寧な描写と時折挟み込まれるルーマニアの地方の映像は印象に残ったが、ドラマとしては物足りなさも感じた。ただこの監督、アドリアン・シタルはちょっと注目してもいいかもしれない。今後も追いかけてみよう。
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