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台北ストーリーのこーたのレビュー・感想・評価

台北ストーリー(1985年製作の映画)
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恋は都市が作る。
80sの台北。都市が急速に発展し、ひとびとの暮らしが、それに追いついていない。
着るユニフォームは立派でも、プレーは拙い、少年野球のよう。
若者はその未熟さに気づかず、異国への無垢な憧れに浮かされて、陽気なバカ騒ぎを繰り返す。
街にきらめく日本企業の広告に、日本のTVコマーシャルに夢をみる。

都市をつくってきた女は、街とひととのあいだのズレに気づいてしまっている。
若者と同じようにはもう騒げない。
それでももっと遠い異国、アメリカへいきさえすれば、未来は開けると信じている。

アメリカから帰ってきた男は、異国へ行ったからといって、すべてがうまくいくわけではない、ということを知ってしまっている。
みえている世界のちがいが、故郷のひとびととの、女とのすれ違いを生む。
ブカブカのユニフォームを着て、なにも知らずに駆け回っていた少年野球のころを懐かしみ、あのころに戻りたいと願う。

街とひととのズレが、ひととひととのズレに重なる。
恋が都市によって醸成され、恋と街の織りなすあざやかな共犯関係が、わたしを誘惑する。
わたしは恋するふたりをみているのか、街をみているのか、わからなくなる。
街とひとが、ひととひとが、男と女が、わたしとあなたがすれ違う。

ラヴストーリーは、だれが、でも、どのように、でもなく、どこで、の物語だ。
これは東京でもロスでもない。台北の物語(ストーリー)なのだ。
街の光が生み出す闇が、男と女を飲み込んでいく。
恋が闇に消え、その陰影がわたしを照らす。
わたしは街に恋をする。