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台北ストーリーの小のレビュー・感想・評価

台北ストーリー(1985年製作の映画)
4.1
自分にとっては芸術的過ぎる『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』のエドワード・ヤンが、1985年に手がけた2作目となる長編監督作品。この監督の映画がどうも苦手らしく、5月鑑賞時には寝落ちで全く入ってこず、再鑑賞。

人物の心情を言葉ではなく映像表現によって示していくから、その心情を見失わないように追っていかなければならない。言葉が少ないと静かだからぼんやりしがちで、置いていかれる危険性が高く、置いていかれると途中でのリカバリーが難しい。特技寝落ちの自分が苦手な理由はこのせいだろうと。

物語は良くできているから、集中力を切らさず完走出来れば、人間の内面と人間をメタファーとした社会の変化の両方を、芸術的に描いたナカナカの映画として味わえるような気がする。

今回の鑑賞で、ちょっとわかった気になってきて(こういう気持ちがキケンだけど…)、クーリンチェもタルコフスキーもいけんじゃね?みたいな、若干浮かれ気分に。以下、少し内容について。

<「『台北ストーリー』の主人公2人は、それぞれ台北の過去と未来を表している。過去から未来への移行というのがテーマだ」(エドワード・ヤン)>(公式ウェブより)。

急速に変わりゆく台北で、男は過去の栄光にしがみつき、女は過去から逃れようとする。一般的に言えば、自分の存在を、男は社会のしがらみに見出し、女は自分の気持ちに見出す、みたいな感じもする。だから社会が大きく変わると男はオロオロしてしまい、女はやりたいことに向かっていく的な。

クーリンチェ同様、光と闇を使って、人の心情や社会の心象風景を表現しているかのような映像。寝落ちしない自信はないけれど、クーリンチェをもう一度観たくなってきたかも。タルコフスキーも…って甘いかな?

●物語(50%×4.0):2.00
・急速な近代化、国際化の進む台北で変わりゆく若者の心情。それは台北自身の姿、みたいなスケール感もある気がする。

●キャスト、演出(30%×3.5):1.05
・女優さんの表情が好き。特にタバコのシーンは素敵。

●映像、音、音楽(20%×5.0):1.00
・全てにおいて意味のある映像表現、なのだろうと思う。完全に理解できてはいないけれど。
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