ノラネコの呑んで観るシネマ

サーミの血のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

サーミの血(2016年製作の映画)
4.5
1930年代、北欧先住民族サーミの少女の物語。
嘗てラップ人と呼ばれた放牧民サーミは、スウェーデンで劣った人種として差別され、寄宿学校ではサーミ語も禁止、進学の道も閉ざされる。
自分が被差別階層で、このままでは未来が無いと気付いた時、人はどうするのか。
諦めて差別と好奇の目を甘んじて受ける。
支配階層に対してプロテストする。
あるいは、自らの民族的アイデンティティを捨て、支配階層の中で別人として生きる。
老人となった少女を描く、現在のシークエンスで、過去がサンドイッチされる構造。
ある意味、最も辛く過酷な人生を選択した少女時代と、年輪を重ねた現在との対比が、鈍い痛みとなり観客の胸に刺さる。
運命に抗い、何者かに成りたかった彼女は、自ら道を切り開くが、その代償として大切なものを失い、一生罪悪感を抱えて生きざるを得ない。
差別は、人から何を奪うのか。
たとえ今は差別が無くなった、弱まった、表には出なくなったとしても、本作の主人公の様に過去の差別によって大き過ぎる傷を負った人たちは、今も血を流しながら生きていることに気付かされる。
描かれているのは、日本の所謂通名の問題や部落差別にも通じる内容で、決して過去の話では無い普遍的テーマ。
力作です。
ブログ記事:
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