Urikko

サーミの血のUrikkoのレビュー・感想・評価

サーミの血(2016年製作の映画)
4.3
引き込まれて心に刺さる映画でした。
進路や生活などサーミ人というだけで厳しく差別され、自分で選べない状況からどうしても脱したかったエレ。その情熱たるや凄いとしか言えない。
お金もツテも計画も無く、ただその情熱だけでやって行く力に感嘆。
それだけサーミ人という事で理不尽な仕打ちをさんざん受けたのだ。
だから サーミでさえ無ければ自由になれるというエレの気持ちと決断は切なく辛い。
トナカイと同等の扱いを受けて傷付けられた耳を一生気にしているエレ。友情ではなく、人種として好奇心から友好的な扱い受けて居たたまれなくなるエレ。彼女がどれだけ傷付き、その経験からサーミの血を嫌うかが窺い知れる。
でも最後に妹の耳元で詫びた時に、サーミ人、家族への後ろめたさが彼女にずっと付きまとっていたんだ....と胸が締め付けれられた。
この映画を観ながら、アイヌ人と被るところが多そうだなぁって思った。遠い国の事じゃなくて、自分の身近な所でも同じ様な物語が繰り返されているのだなと。
彼女の息子と孫娘は、自分達にサーミの血が入っている事に何の引け目も無さそうで 積極的に関わろうとするけど、それを好まないエレ。
そんな彼女を見て何だか複雑な気持ちになりました。
サーミの血を受け入れる事が出来ず、かといって捨てきれるものでも無い。
血に翻弄された悲しい女性を浮き彫りにした、何とも切ない後味です。
雄大な自然の風景が美しく素晴らしい。
挿入歌の音楽が沁みるように効果的。
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