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サーミの血のハルのレビュー・感想・評価

サーミの血(2016年製作の映画)
4.0
ラップランドとは「辺境」を意味する蔑称である。ラップ人(ラップ人は自身をサーミ人と呼んでいる)は古くからこの地に住み、遊牧を生業としてきた。北欧から漂う牧歌的なイメージのせいなのか、その彼らが酷い差別と偏見に晒されていたことはあまり知られていない。

この映画には、サーミ人の少女が己の境涯から脱して人生を獲得する「成長物語」の側面と、サーミ人でありながら自身の中に流れるサーミの血を否定してしまう「悲劇」の側面がある。

私は、強かに成長していく彼女に喝采を送りつつも、自身のルーツを否定してまでもそれをやってしまう点に違和感を覚えた。差別されていた側が差別する側に回ってしまうのは矛盾しているし、非常に悲しいことでもある。もっとも、それは当事者であるところの彼女が最も痛感していただろう。妹の亡骸と対面し、「私を許して」と告白するシーンが、それを顕著に表していた。人間のルーツを扱った作品で、これほど悲しく、重くのしかかったものは初めてである。
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