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サーミの血のnanaのレビュー・感想・評価

サーミの血(2016年製作の映画)
3.4

あの夏の夜
私は変わった

「あなた達の脳は文明に対応出来ない」

ラップランド、サーミ人。
平均身長は男性で152センチ。
北欧〜ロシアの少数民族。

体格は大きく描かれていますが、アナ雪のクリストフもサーミ人がモデル。

彼らには近隣諸国から侵略を繰り返されてきた悲しい歴史がある。
宗教の改宗、法外な税金の徴収など。

今作はスウェーデン北部でトナカイの飼育を生業とするサーミ人の少女、エレ·マリャが人生に抗うストーリー。

支配勢力のスウェーデン人によって「劣等民族」とされ、サーミ語を禁じられる環境で寄宿学校に通学するエレ。
テントで生活し、お風呂は湖の水。

成績も良く、トナカイを飼育する生活から抜け出したいと進学を望むが、
「あなた達の脳は文明に対応出来ない」
と教師に蹴られてしまう。

頭が良く上昇志向が強い。
憤りを感じるが自らの力ではどうにもならない。
そんな時、サーミを偽り出逢った少年に恋をする。

強い眼差しの少女エレ。
恋をした少年もまだ学生だが、ここにしか希望の糸を見いだせないのは、あまりにも狭い世界で生きて来た証だろう。

この人しか…
自分を全てから救い出してくれる筈。
いや、そうなってもらわなければ困る、
この時のエレには一生をかけた嘘だったのだろう。
恋をした、それだけでは無かったと思う。
過酷な突きつけられた人生を、必死で変えようとする悲しさ。
狡猾ですらある。

名前を変え嘘をつき…。
まだ稚さの残る少女が体を張り、なんとかスウェーデン人になりきろうとする姿は切なすぎる。

少年の立場になれば悪い女に引っかかったようなものだけれど。

愛情と計算の恋愛か、夢を見ずにはいられなかった少女なのか?
どちらもあったような気がする。

ラップランド
この作品を鑑賞するまで知らなかった。
北欧で今だ続く人種差別。
サーミの唄、ヨイクは暗く悲しい響き。

サーミ人の監督が制作し、
主人公もサーミ人の少女が演じている。

北欧の自然が美しい。
現代的なスウェーデンの住宅と、サーミ人が暮らすテントの対比がこの実情を物語っている。


※世界的に有名なヨーロッパの童話に出てくる、原作では悪者の小人。
そちらのモデルとの説も。
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