菩薩

ハローグッバイの菩薩のレビュー・感想・評価

ハローグッバイ(2016年製作の映画)
4.3
ハローもグッバイも、そしてサンキューもソーリーも、素直に言える人間は強いし、素直に受け入れられる人間はもっと強い。俺は残念ながら女子高生をやったことが無いから、彼女達が集団の中でどの様に悩み、苦しみ、そして行動しているのか、そこのとこの機微はどうしたってよく分からない部分もあるけど、おそらく菊地監督は過去に女子高生だった時期があるのだと思う、それくらいに見事である。と思ったらどうやら主演の2人が脚本の段階からしっかりと参加意欲を出していたのだと言うことで、そんな作り手の愛を無心に受けた作品なのだから、仕上がりは当然掛け値無しの傑作になる。

きちんとした身なり、スカートの丈、靴下、黒髮、ベスト着用、真面目さゆえにクラスの中で少し浮き「委員長」とあだ名をつけられる優等生キャラ、しかし家族の愛を受けられぬ寂しさから日頃万引きを繰り返してしまう【葵】、かたやクラスの中でも目立つ存在であり、派手な容姿、短いスカートに茶髪、シャツ出し、一応は「友達」に囲まれた華やかな学校生活、しかし元彼との間に子供が出来てしまったのでは無いかと途方にくれる【はづき】、そんな本来は交わるはずのない2人が、ひょんな偶然からもたいまさこ演じる痴呆老人【悦子】の為に人肌脱いでいく人間ドラマ。かなり設定としてはベタだし、そもそも主演の2人のキャラ設定自体もベッタベタではあるが、それが陳腐にはならないのは菊池監督の才能とセンスのなせる技か、むしろメジャー・インディーズ問わず多くの名監督の助監につき、様々な人生模様に触れてきた経験のなせる技のような気がする。「友達ってなんですか?」とのキャッチコピーが示すように、本来そこに生まれるはずのない「友情」が育まれていく様は世代問わず感動を呼ぶであろうし、ほとんどの記憶が抜け落ちつつも、どうしても忘れられない、忘れたくない思いを抱える悦子がついにその目的に達する場面では目頭を熱くするだろう、そこで鍵となるテーマソングがまた非常に良い。友達とは一体なんなのかなんてこんな友達がいないから日夜映画鑑賞に精を出している自分になんか到底わかるわけもないけれど、薄っぺらい言葉より大切なのは、その瞬間の記憶の共有だとか、想いの共有だとか、「忘れられない時間」を共にするって事で、あとやっぱり、目の前で素直に泣いて、そして何事も無かったかのように笑いあえる事の出来る人物が、「友達」ってやつなんじゃないかと思う、うん、やっぱ俺にはそんなのいない…けど、これは『ディアーディアー』共々本当にオススメしたい。長編2作目でありながら、俺の中でもはや菊地健雄は巨匠の域、女子高生物だとか、青春物だとか侮る無かれ、この人の人間関係の描写力には、今後も期待が持てる。