Miver2

ハローグッバイのMiver2のレビュー・感想・評価

ハローグッバイ(2016年製作の映画)
5.0
2人の女子高生と認知症のお婆ちゃんを軸にして描く物語は3人それぞれの存在感をしっかりと感じさせながら、丁寧に描く物語がとても面白かったな。
蒼くて時に痛々しくて苦いけど、その後味はとてもすっきりしている素敵な映画で、素晴らしい作品だった。


最初に音楽が鳴り響きながら、言葉ではなく表情でさり気なく魅せて行くその展開にどんどん引き込まれて行った。
そして言葉ではない所でのその表情と姿が時に対象的だったその光景が、とても印象的だったりしつつ。

あと序盤で1人が花壇にいて、2人がとある教室で会話する場面があったのだけれど。
その時に学校ならではな音楽の鳴り響き方をしてたのがとても良かったな。
あの場面、音の鳴り方が何だか立体的に感じられた。
何よりも劇中で流れてくる音楽がまた印象的に使われていて、とても素敵で。
手紙の行方が決着つくそのシーンで鳴り響くピアノの音色と、そこで露わになる気持ちに思わず泣けた。

途中、携帯の画面からどんどん言葉が激しく渦巻いて行く所である種のグルーヴを感じながら、そこで場面が切り替わった時のカット割りとその撮り方に思わずグッと来た。
あれは本当に凄かったな。
ふと鈴木清順監督の映画を思い出したりもした。


物語の軸になってる2人の女子高生の距離感の描き方の絶妙ぶりがとにかく見事で、特にはづきの表情が変化して行く後半がまたとても観応えあって面白かった。
あの2人の距離感の変化と、その気持ちが滲む表情や姿がとても深く響いて来るものがある。
それがまた観終わった後にとても深い余韻を残してくれる。

個人的に好きな監督達の映画は90分位でまとめて来る方が多いので、これだけ凄い作品を観たら、菊地監督の映画を追い続けて行きたくなるね。

この作品は登場人物たちとそれを演じる役者さん達の素晴らしさは勿論の事、派手さはないけど、しっかりと丁寧に物語を描いて行く菊地監督のさりげない職人ぶりがとにかく素晴らしい、最高の映画。

そしてもたいさんや川瀬さん、渡辺さんと言ったある種安定の方々を観る楽しさは勿論ですが、萩原さんや久保田さんと言った方の初めて観るその素晴らしい演技や姿を観ていて嬉しくなる。
監督の職人的な素晴らしい演出と共に、俳優さん達それぞれの魅力をしっかりと感じられる素晴らしい作品。
今の所、河瀬直美監督の「光」と共にぶっちぎりで今年のベスト。

出来る事なら、上映期間中にもう一度観たいな。
観たらまた発見もあるのではないかと思うし。
何よりも映画を観る醍醐味がこの作品に詰まってると言っても良い位、文句無しに素晴らしい作品でした。
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