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ハローグッバイのslowのレビュー・感想・評価

ハローグッバイ(2016年製作の映画)
4.2
思い出を彷徨う老女は、現代を生きる2人の少女に手を引かれ、かけがえのないメロディを頼りに旅に出る。

学生時代とは、暗黙の解に皆十字を切り、この先何十年と続く見えない柵に耐え得る自分を作るための時間なのかもしれない。コミュニティに属することの代償。コミュニティの外で生きることの代償。今思えば、それはまるで閃光のような日々であり、もう戻って来ることはないと嘆いた時もあれば、もう戻って来てくれるなと願った時もあったような。そんな身勝手、あの頃の自分は聞き分けてくれないだろう。

高校生を扱った今時の映画としては、台詞がかなり少ない方かもしれない。その分、表情や後ろ姿に語らせる部分が多く、ながら見などしていようものなら大事な感情を見逃してしまいそう。でも、そういう映画は支持したい。
心を見透かされてもお互いに負けじとふっかけ合う強気は、無敵の十代ならではのあれで恐れを知らない。その緊迫感が覚悟に変わるシーンも巧く主演の2人に託していて、それに応えた2人もお見事。全編を通して若手らしく清々しい演技に好感が持て、この手の映画にしては非常に見応えと満足感があった。
友達の名前を初めて呼んだ時の気恥ずかしさなど、儚さを焼き付けた決定的瞬間を幾つもこの作品に見つけることができる。こういう作品は久しぶり。「ハローグッバイ」と共に万感の思いとなって馳せたものは、もう塗り重ねられた後の余韻でしかない。けれど、燦として凛として全力で向き合った少女達の姿は、私が共感したかった青春そのものだったのだと思う。
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