shibamike

肉体の門のshibamikeのネタバレレビュー・内容・結末

肉体の門(1977年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

「すけべ映画じゃ!すけべ映画じゃ!」
と鼻の下を伸ばし、期待に胸と股間を膨らませ、
映画館座席シートに鎮座。

開始数分で日本人女性が鬼畜米兵に強姦されるショッキングシーンが映し出される。
だらしなく伸びていた自分の鼻の下は急上昇して鼻孔にめり込み、
期待に膨らんでいた胸と股間は干し柿みたくしわしわにしぼんだ。
「すけべ映画ちゃうーっ・・・」
即座に映画鑑賞モードを「すけべえ」から「しかめっ面」に切り替えた。
グッバイ マイ リビドー。

終戦後の1946年、食べ物、衣類、住居何もかもが不十分な日常を身体一つでたくましく生き抜く女性達。
そのメンバーに孤独な美女ボルネオ・マヤも一員として加わる。
(とっぽい名前だぜ)

基本的につっぱったズベ公しか登場せず、イカす科白が多い。
マヤが小政のせんに出会ってすぐに「あんた、パン助?」とほざき、
せんから強烈なビンタをくらい、こう言われる。
「口のきき方に気をつけな。他に売るもんがなきゃ、身体売るしかないだろ。生きるためにはさ。」
一日の仕事を終え、シャワーを浴びるときにも、せんは言う。
「病気と妊娠はパン助の敵だからね。よく身体を洗うんだよ。」
せん姉さん、カッケーっす!

パン助が身を寄せ合い、戦後の厳しい環境を生き抜いてゆくためにはグループの結束・秩序が重要である。
彼女達の鉄の掟、それは「仲間を裏切らない」、
「タダで男と寝ない」だ。
彼女達の誇り高き一面として、「アメ公とは寝ない」というものもある。
しかし、一方で他のパン助グループにはアメ公と寝るグループもあった。
そんな彼女らはパン助でも「洋パン」と蔑称されていた。
(言葉の響き的にはパン助より洋パンのが洒落てる気が・・・)

身体を売るといっても一回40円とかはした金しかもらえないらしい。
(当時の物価はよくわからない)
払った金のモトを取ろうとパン助達の身体を隅から隅まで味わおうとする男達。

パン助仲間のお六が結核?を患っており、マヤが健気に売り上げ金からペニシリンを調達するもヤクザの意地悪でヒロポンを渡されてしまう。
そうとは知らず、ヒロポン中毒となってしまうお六。
お六がかなりの迫力ある演技をたくさん見せる。
クスリを打った直後、男とヤリたくてたまらなくなるといい、
「股間にいる1000匹の毛虫がクスリを打った瞬間、一斉に蠢きだすのさ。」
とトロリとした目で話す。
なんちゅう淫靡な科白だ、とドキリとした。
そして、自分は何となく押尾学氏のことを思い出した。
クスリを女性に与えて快楽を貪る獣にしてしまうことに押尾氏は興奮していたのかもしれないと思った。だから何だ。

お六は結局死んでしまうが、血を吐きながら地面を這いずり回る最後は鬼気迫るものをスクリーンから感じた。

本作タイトルの「肉体の門」。激渋だし、意味についてついつい考えてしまう。
鉄の掟「タダで男と寝ない」を破った町子はグループからリンチを受けた後、吐き捨てる。
「あんた達は身体の悦びを知ってるアタシが羨ましいんだよ!」
復員兵 伊吹と一つに結ばれたあと、マヤも町子同様グループからリンチを受けた後、吐き捨てる。
「私はしんちゃんと愛し合ったんだ!」
肉体を門にして、その先には「悦び」、「愛」がある。

そして、映画館に掲示していた解説を読んだら、
「この『肉体の門』は裏切ることのない人間の確かなもの、肉体の確かさを提示したのである。」
とあった。
戦時中、戦後と何も信じられない状況で信じられるのは己の肉体。
労働し生活の糧を得るたくましい肉体、快楽を貪るケダモノのような
肉体。肉体って便利で官能で危険だ。

とにかく「肉体」がこれでもかと登場する本作、女の肉体、男の肉体、牛の肉体(屠殺シーンがグロい)、おっぱいはぶるんぶるん揺れ、グワシと鷲掴みされ、お尻は棒切れでビシンビシンしばかれる。
牛さんに関しては臓器、脂肪、鮮肉を死にたてピチピチで鑑賞できる。
(かなり強烈)

押し殺す喘ぎ声とみなぎる肉体とほとばしる汗と40円。
むせかえる。
マヤは最後に全部燃やし尽くし、生き延びる決意を固くする。
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