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美しさと哀しみとのakrutmのレビュー・感想・評価

美しさと哀しみと(1965年製作の映画)
3.8
二人の女性の愛を中心に、復讐や嫉妬をテーマにした川端康成の同名小説を映像化した作品。師匠として、そして恋愛対象として、画家の音子を慕うけい子が、音子の若い頃の不倫相手の小説家・大木への復讐のために、大木やその息子と関係を持っていく。

残念ながら小説を読んでいないので、その意味での映像化の良し悪しはわからないが、けい子を演じる加賀まり子のエキセントリックでかつコケティッシュな魅力が圧倒的な存在感を示している。彼女はまだ映画デビューをしてからそれほど経っていないときであるが、同時期に撮影された『月曜日のユカ』とともに、その後の加賀まり子の小悪魔的なイメージがすでに出来上がっていることがよくわかる。川端康成本人も、加賀まり子の演技をたいそう気に入っていたそうである。加賀まり子を知る人にも知らない人にも観てほしい作品である。

一方で、復讐される側の大木役の山村聰の演技が、感情の起伏があまり伝わってこない棒読み口調で、あまり感心できなかった。同世代であれば、佐分利信のほうが適役のように思うし、時代を無視すれば、山崎努や津川雅彦に演じてもらいたい役である。同様に、大木の息子役の山本圭の演技もぎこちなく感じて、いまいち好きになれなかった。まあ、二人の女性が主役の映画なので、それでもいいのかもしれない。
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