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立ち去った女のbennoのレビュー・感想・評価

立ち去った女(2016年製作の映画)
4.8
長尺作品で有名なフィリピンのラヴ・ディアス監督。
この監督にしては異例の短さ(?!) だという228分の作品です。

モノクロ、1シーン1カット、BGMはほぼ無し…眠くなる要素満載のはずが…何故か映画が始まるとそこからエンドロールまで目は釘付けになりました。

無実の罪で30年間服役していた元教師の女性ホラシアが、自分を陥れた元恋人ロドリゴに復讐を企てます。

物語の主軸は復讐劇ですが、1997年当時のフィリピンの社会情勢をも映し出します。
誘拐大国フィリピン…治安の悪さ…貧富の格差…華僑との複雑な関係性…。

そしてホラシアはユニークな人たちと出逢います。
ロウソク泥棒常習犯でちょっと知的障害のあるマメン…バロットという卵売りのおじさん…夜な夜な酔っ払って道で踊り出すゲイのホランダ…

彼らマイノリティの人たちと出会うことでホラシアの心に変化が生じます…また、彼らもホラシアから慈悲を受け…ある者が思いがけない行動を引き起こします。

復讐心という過去の悲劇に起因した後ろ向きな思考しかなかったホラシア…しかし出会った彼らは社会の中で苦しみながらも日々、懸命に前を向いています。
そしてホラシアのとった行動は…

1シーン1カットの映像がまるで写真集をめくるかの如く素敵で、その1シーンの構図、画角も完璧、その中で繰り広げられるストーリーのシークエンス…
そしてアップを殆ど用いずロングショットが多いのも観る側の傍観者的立場を意識しているようにも思えます。

…いい映画に、出会えました𓂃𓊝𓄹𓄺


因みに、『ショーシャンクの空に』の基になったトルストイの短編小説にインスパイアされたという作品ですが…内容は全く違います♡
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