ラヴ・ディアスという名前から漂う巨匠感。
ポスター・ヴィジュアルを見れば分かる気品と色気。
とは言え228分には誰だってたじろぐ。
なんとしてもスクリーンで見ておくべきだったと始まって間もなく確信。
リアルタイムで秒針が進むかのような時の流れ。
美しいモノクロに見惚れてるうちに主人公と呼吸を共にしているかのような錯覚に陥る。
冒頭で香港の返還など政治の話しが語られる。
主人公の取り返しのつかない30年に対する怒りや哀しみ、穴埋めにならないと知りつつ行動せざるを得ない衝動は、監督が母国フィリピンに向けた忸怩たる思いを重ねているのだろう。
フィックスで長々と切り取られるシークエンス。
他人の人生の断片が眼前に迫ってくるようだ。
この感覚はなんだろうか。
バックパック背負って第三世界を旅した時に見た光景のようなデジャヴ感。
言葉もさして通じないし、時間を持て余し街行く人々を眺め、そこかしこで繰り広げられるやり取りはエキセントリックであるが全くそうでもないとも言えた。
無論本作では異邦人の目に決して映ることのない厳しい場面が数多繰り広げられるのだから、迂闊な事は言えない。
長々と書いてる割に核心に至れないもどかしさよ。
これだけの長さに神経を研ぎ澄ますのは無理。
人が話しているのを延々と聴き続けるなんて無理。
見落としたり聞き漏らした事は想像力で穴埋めすればいいんじゃないだろうか。
世俗に毒された心身を絶食と酵素ドリンクでリセットするかのような稀有な作品。