アズマロルヴァケル

リチャードの秘密のアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

リチャードの秘密(2012年製作の映画)
3.6
思ったよりも暗くて説得力のある映画。

感想を言う前に余談をひとつ。劇場未公開を中心とした映画フェス「未体験ゾーンの映画たち2017」があって、アルバトロスは「バンクラッシュ」「バイオレンス・マックス」「ファスト・コンボイ」「Planet of the sharks 鮫の惑星」「スモーク・アンド・ミラーズ」「真夜中のパリでヒャッハー!」を配給したもののこの「リチャードの秘密」は「ルーム」監督の原点映画なのに未公開という可笑しい話であります。

https://aoyama-theater.jp/feature/mitaiken2017

話は部活も友人も良好のリチャードがコナーの恋人ララを好きになり、コナーと別れたのだろうとララと付き合うのですが、パーティーでコナーとララが親しく話していることが引き金となり、喧嘩を起こしてしまい、仕舞いにはコナーに止めの蹴りを頭部に浴びせて救急車を呼ばずに放置してしまう話。

で、内容は100分以下の作品でありながらも濃く、暗く地味で淡々としています。前半の40分はパーティーでララと知り合い、ビーチハウスの外でベッドインしたりするのはいいとして段々リチャードの両親との食事会でリチャードがダメ出しするところでリチャードのダメな部分が出たりリチャードがコナーと話すものの何処か挨拶を無視してるところで妙な空気が流れ、後半の40分では事件後の心が痛くなるシーンの連続で見てると辛くなります。

名シーンとしてはリチャード父とリチャードが庭でリチャードが真実を話して抱き合い、リチャード父が信じられないと言わんばかりの表情をするシーンやビーチハウスでリチャードが泣き叫ぶシーンは見ものではありました。

なんせ、ラグビー部コーチ夫婦とリチャード家との食事の際にリチャード父が「失敗するのが人間ってものだ」がこの映画の核、または格言と言えるもののあの事件でリチャードが人間性を再認識したうえで理解し、勉強になったと思ってしまいます。

また、ちょっと説明不足ではありますが、ラストシーンのリチャードの誇らしげな顔でリチャードが再出発しようと考えているのではと思われ、モヤモヤはありますがちょっと清々しい感じではある。

重い実話映画ではありますが、ラストシーンのモヤモヤ感や本編の地味さを吹き飛ばすほど役者の演技が良く、良質なため、「ルーム」の原点としてはそこそこ良く出来ていた隠れた名作でした。