マクガフィン

空海 ーKU-KAIー 美しき王妃の謎のマクガフィンのレビュー・感想・評価

2.8
遣唐使として長安を訪れたの空海と白楽天が奇怪事件の核心に迫る物語。原作未読。

その美貌により皇帝の寵愛を受け、唐を傾国された伝説の美女の楊貴妃。死んだはずなのに姿も形もなく、日本へ逃亡した都市伝説になるような起源のエピソードなどを絡めた世代間にまたがる物語は興味深く、それらの史実や逸話と伝説をミックスした創作は興味津々。

長安の広大なセットが圧倒される威厳に満ちた美しさで、豪華な衣装と相まって、幻想的ファンタジーで絢爛豪華なスペクタクル歴史絵巻を目指したのだろう。
バディ的に空海と白楽天が真相究明するのだが、前半の移動しながらの会話のやり取りがテンポが良くてエピソードの繋ぎとなり、その背景の自然美や色彩豊富な造形物への移り変わる模様も好感。

しかし、キャラの構築がイマイチで、空海は天才の逸話が殆どなく、好みの問題だが楊貴妃を演じた役者(チャン・ロンロン)とイメージの隔たりが大きい。ロンロンはフランスと台湾のミックスらしく、多種多様な人々が長安に訪れた唐の時代を象徴するようで良いのだが、東洋的な美しさはあまり感じられず、才色兼備の才の演出も殆どないので、寵愛を受けるならまだしも、傾国する所以が弱い。また阿倍仲麻呂の必要性の希薄さや、CG故に猫の祟りの怖さが殆ど伝わってこなくて残念に。

更にプロットが弱く編集が粗い。かと言って幻想映像に特化している訳でもなく、全般のテイストは背景の絢爛豪華さに集約するような大味で中途半端に。後半の謎解きパートは冗長で、様々な箇所を削れば110分位に纏まれたはずでは。
吹き替え映画ならでの声優とのイメージやニュアンスのズレで感興を削ぐ。何故字幕上映はしなかっただろうか。選択の余地は残してほしいものだ。

映像重視でも良いが、それならもっと振り切った演出にしてほしいと感じてしまい相性は良くないが、壮大なスケールでセット独自の色彩豊富な造形美は好みで見ているだけで楽しかった。