えいがドゥロヴァウ

ライフのえいがドゥロヴァウのレビュー・感想・評価

ライフ(2017年製作の映画)
4.0
無重力での船内活動を見ているだけで心が踊ってしまうのは『ゼロ・グラビティ』の功罪でしょうか
冒頭、宇宙ステーション内でディテールの込んだ計器類をいじくりながら
クルーらがスイスイと移動する
そしてその様子を滑らかに捉える、天地の概念を取り払われたカメラ
早くも昨今の宇宙映画の醍醐味を味わえたところですっかり引き込まれました
プロットが『エイリアン』を多分に彷彿とさせる内容であまり真新しさはありませんが
カルビンと名付けられた地球外生命体のユニークな殺人方法や無重力空間で漂う死体と血の表現など映像的魅力に富んでいて
終始ハラハラドキドキで鑑賞
音楽も重厚感があり良かったです

火星の土壌から発見されたカルビン
劣悪な環境ではゾウムシのように仮死状態になり生き長らえるとのことですが
一体、どれだけの長い期間をそんな状態で過ごしてきたのやら
それだけでも並ならぬ生命力を有していることが伺えます
またカルビンの行動は原始的な生存本能に基づいており
自らに害を為すと見なされたクルーは次々と狩られていきます
非常に高い環境適応能力がありますが
それ以上のものも感じさせます
それは謂わば役割によって特徴や働きを変異させる幹細胞のような性質
カルビンの獰猛な性格は決して本来的なものではなく
仮死状態から覚醒した直後の愛嬌ある姿から豹変したのは
電気ショックを与えられたことに起因しています
その性格自体も外的状況に対する必要に応じて決定されているかのようで
それだけに対応の選択によってはカルビンとの友好な関係性も有り得たことが見て取れます
地球外生命体の生態の解釈としてとても興味深く鑑賞しました

パニック映画であるとともにファーストコンタクトものでもある本作
同じく今年公開されたドゥニ・ヴィルヌーヴの『メッセージ』もとてもユニークなアプローチの仕方をしているファーストコンタクトものでしたが
本作もそのうちの佳作のひとつだと感じました
『アンドロメダ…』の球菌から『宇宙人ポール』のオッサン臭いグレイまで
多種多様で楽しいですね
Theファーストコンタクトものの『未知との遭遇』は未鑑賞ですが…

脚本家のレット・ニースとポール・ワーニックは『デッドプール』の脚本も手掛けたようで
それを知るとライアン・レイノルズの宇宙飛行士らしからぬ皮肉屋ぶりは当て書きとしか思えなくなります
真田広之は見た目通りの寡黙で知的なキャラクターですが
妻の出産を中継で見届けた際の寛いだ体勢と「がんばれー、カズミ、がんばれー」という何とも気の抜けた声援の印象が強烈で
物語後半で「帰るぞ、カズミ」と家族への想いを言葉に込めるシーンの説得力が皆無
日本語を喋っているのに日本語の字幕がつけられるという珍事
ジェイク・ギレンホールは長期の宇宙滞在により体調に翳りがあり
病んでいる感じが板につきまくっています
レベッカ・ファーガソンはひたすら眼福でした

隔離レベル
1:培養ガラス
2:ラボ
3:宇宙ステーション
そして…
望んだ通りの結末にニヤリ