イペー

ライフのイペーのレビュー・感想・評価

ライフ(2017年製作の映画)
3.5
火星植民でさえ絵空事とは言えなくなってきた、このご時世。
舞台もグッとリアリティを増し、宇宙の果ての果てじゃなく、ISSの内部でアレやコレや巻き起こるのであります。

作品の花形たる地球外生命体、その名も"カルビン"ちゃん。
知能は高いし、弱点らしい弱点も見当たらないし、ほぼ無敵なんだ半透明の癖に。

対する人間チーム、揃ってエキスパート。
地球代表の誇りを胸に秘め、人格・判断力・結束力、いずれも申し分ない方々。

そんな中に、暴走アンドロイドや不良軍人、出世欲に囚われた小悪党…とかは出てこないんですよね。当たり前ですよね。

優秀な宇宙飛行士であり、研究者でもある乗組員の皆様ですから、軽率な行動で自らを窮地に追い込んでしまう様なこともありません。

増していくカルビンちゃんの脅威に対して、観察から駆除、やがて隔離へと柔軟に対応を変えていきます。

そこへきて、無闇に銃火器を乱射して船体に穴を開けたり、不自然な単独行動で敵に襲撃のタイミングを与えたり…はしませんよね。当然ですよね。

キャストに名を連ねる豪華なメンツ。
設定からしてB級一直線な本作ですが、彼らの存在感が物語に説得力を与えちゃっております。

ジェイク・ギレンホール、ライアン・レイノルズ、レベッカ・ファーガソン。
ジャンクなモンスターパニック映画には勿体無い、実力派ばかり。
あたかも高級食材で盛り付けられたインスタントラーメンのよう…。

そうなると、"お子さま舌"の自分といたしましては、どうにも居たたまれない!

もっとケミカルな、身体に悪そうな映像が欲しい!
軍隊ジョークを飛ばし飛ばし、トリガーハッピーなゴキゲン野郎共の散り様が観たい!
カルビンちゃんの捕食シーンをもっとド派手に、ねちっこく!
ヒロユキ・サナダよりも、リプリーを… ‼︎

まぁ相性もあるし、「昔は良かったおじさん」になりつつあるってのもあるんですが。

"地球外"ならぬ"地球内"生命体の動向に一喜一憂させられている我々の現実に立ち返ってみるならば、徹底してコチラ側の論理の埒外にあるカルビンちゃんの躍動する姿にこそ、何かしらの表象を見て取ったりもして。

そして、カルビンちゃんと人類が迎える結末。
ギリギリで保っていた均衡は一気に崩れて、映画は"陳腐"と片付けたくなるような、危なっかしい着地を見せてエンド。

そこに"現代人の憂鬱"を感じた気がしたのも、どっこい時代遅れな本作が、単なる『エイリアン』アップデート版には終わらないということの、捻れた証明なのかも…。

という無理筋な解釈を言い訳がわりにして、本稿の締め括りといたします。
やっぱりノストロモ号が見たい…!

…ちなみに好きなインスタントラーメンは『サッポロ一番みそラーメン』です。
塩じゃないんだな、みそなんだな…。
イペー

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