カツマ

THE BATMAN-ザ・バットマンーのカツマのレビュー・感想・評価

4.2
浮かび上がる月光。コウモリたちが闊歩する夜に、暗闇と同化した男が現れる。彼の名はバットマン。悪をくじき、街を守る孤高の男。だが、悪は彼が翼をいくら広げようとも拡散し、街の治安を狂わせる。平和など遠く彼方へ消えたのか。仮面の男は哀しみを背負いながら、泣き叫ぶようにその拳を振り下ろす。

バットマンが3時間という大長編で久々の復活!クリストファー・ノーラン版から約10年の月日を経て、リブート版としての全く新しいバットマンシリーズがここに開幕した。主演には陰鬱な雰囲気を撒き散らす個性派ロバート・パティンソンを抜擢。監督には『クローバーフィールド/HAKAISHA』のマット・リーヴス。過去と現代の狭間で揺めきながら、まだヒーローとしての実像を掴めずに苦悩するバットマン。彼はまだ心の闇と折り合いを付けることが出来ず、もがき苦しみ続けるのであった。

〜あらすじ〜

ハロウィンの夜。ゴッサムシティの治安は荒れ、街のそこら中で犯罪が駆け巡る事態となっていた。そこに浮かび上がる月とコウモリのマーク。街の暗躍者にして、謎のヒーロー、バットマンが現れて、犯罪者どもを一瞬にして殲滅。その夜も街の治安はからくも守られた、かのように見えた。
しかし、その最中、市長ドン・ミッチェルがリドラーと名乗る者に殺害されるという事件が起こる。その現場にゴードン刑事の相棒として立ち合ったバットマンは、そこに彼宛てのメッセージを発見する。リドラーはまだ何かを企んでおり、バットマンにも何らかのメッセージを投げかけていた。バットマンの正体は公には秘密となっているが、その正体は大富豪のブルース・ウェインであった。彼はまだ30歳と若く、バットマンとして活動し始めて2年目。そのせいか不安定で荒削りなところがあり、市長殺害の証拠を掴もうと単身ペンギンが経営するクラブに乗り込むのだが・・。

〜見どころと感想〜

まだ活動仕立てで無鉄砲なところもあるバットマン。だが、その正義感は強く、街を守るためになりふり構わず動き回る姿は、彼がまだ過去を振り払えずに溜め込んだエネルギーが発散へと向かっていることを示唆しているように思う。今作はそんな彼が真の街を守るヒーローになっていくまでを描いた物語。悩み抜き、傷つき、それでも彼は市民のもとへと駆けつける、まだ青くエモーショナルなブルース・ウェインがそこにはいた。

主演のロバート・パティンソンは病的で常に睡眠不足のようなブルースにピッタリハマっており、もがき苦しむヒーローの姿を好演。まだまだ発展途上のバットマンというイメージは強く、良い意味で今後の成長に伴う演じ分けが楽しみだ。キャット・ウーマンを演じたゾーイ・クラヴィッツもシャープでクールな女戦士のイメージに完璧にフィットしており、この二人のハマり具合が今作のレベルを大きく引き上げていると思う。また、ペンギン役のコリン・ファレルが原型を留めぬ怪演で巨大なインパクトを残し、ポール・ダノはいつもの偏執狂な役柄なので違和感なく悪役に徹していた。

今作はサスペンス要素が強い点も魅力的で、まるでバットマンが犯人を追う探偵のような役割を担う。連続殺人事件を追う闇のヒーロー、という分かりやすいクライムスリラーとしての側面はエンタメ要素全開。まるで『セブン』や『殺人の追憶』のような世界観でバットマンを楽しむことができるだろう。

3時間という大長編のため、詰め込み過ぎた感は否めない。だが、これは監督自身がバットマンで表現したいことをぶち込んだ情熱の塊であり、オタク要素の強いカットがそれを象徴しているように思う。物語はまだ始まったばかり。ここからバットマンは何と闘い、どんな正義を見つけるのか。その答えはまだ宙ぶらりんなまま、彼はヒーローとしてのスタートを切るのであった。

〜あとがき〜

とにかく上映時間の長いバットマンのリブート版!サスペンス要素が強いおかげで展開が分かりやすく、暗躍する何者かに狙われる緊迫感は没入感抜群でした。ただ、やはり長かったですね。特に後半はツッコミどころ満載でしたが、中盤のカーチェイスなどは本当に最高なので、トータルでの見応えはかなりありました。

それにしてもゴッサムシティの治安は相変わらずゴミ以下という悲しさ。金田一少年の通う高校と同じくらい人が死にます。それだけにバットマンの前途は長くて、このシリーズはまだまだ未知の展開を我々に見せてくれることでしょう。
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