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THE BATMAN-ザ・バットマンーのKtoのレビュー・感想・評価

5.0
【ひとこと説明】
バットマンの”探偵”の側面がフィーチャーされた傑作ノワールサスペンス映画.

【感想と考察(+公式パンフ情報の一部)】
175分の上映時間を微塵も感じさせないジェットコースター映画でありながら、長編小説を読んだ後のような重厚感が残る映画だった.

LA.コンフィデンシャル(1997)やチャイナタウン(1974)といった過去のノワール作品を彷彿とさせる複雑なプロット. 主人公が巨大な陰謀に巻き込まれて、”街”が混乱に陥る流れはオマージュといっても差し支えなさそう.

マットリーブス監督の美的感覚も最高. ブレードランナー的サイバーパンク観(非現実的なネオンライト、雨)を基調としつつ、暗闇を活かして抑制の効いた映像だった. 照明の数も少ない代わりに、一つ一つの存在感が大きい. 被写体を一色に染め上げるような極端な色彩は、ウォンカーウァイ作品も参考にしている見たい(パンフ情報).

シリアルキラーの捜査シーンはセブン(1995)に影響を受けていそう(予想). 特にジェフリーライト演じるゴードンの立ち振る舞いや雰囲気がとてもモーガンフリーマン.

Something In The Way(Nirvana)が採用されるのにも深い理由があるみたい(そもそも音楽としても独立して素晴らしいが、映画に合わせると表情が変わって素晴らしかった). 世の注目を浴び、不安定な正義を大義として“バットマン”になることに半ば依存状態となっているブルースとカートコバーンの類似性を意識した選曲らしい(パンフ情報).

バットマンの”起源”ではなく”活動2年目”であることも重要みたい. 確かに、起源は既にノーラントリロジーの1作目で十分描かれているし、既知の情報としても良いのかも. 1年以上ゴッサムシティの治安維持に奔走しているも、未だ成果を出せておらず、またバットマンの理念にも不安定さが残る状態(警察との棲み分けや出没機会等)だからこそ、リドラーの術中にハマってしまったのだろう…。
リドラーの目的である●●殺害を、ある意味でサポートしてしまっているのも悲しい。ダークナイトのジョーカーも然りだけど、”正義”の出現によって対抗馬としての”悪”が現れて、当初の正義の存在がぐらつくという流れは現実でも幾度となく繰り返されていて、そこでアウフヘーベンが求められるのだけど。

映像もとても耽美的だった. 特に、バットモービルでのカーチェイスシーンはヤバい. モービルの背が低いんだけど殺意に満ちたデザインで、アクセルふかすだけで怖い. クリスティーン(1983)の車みたいに、それだけでも主役級の存在感がある. 過去のモービルとデザイン比較しても面白いかもしれない…。
あとは、クラブでの戦闘シーンもめちゃくちゃかっこいい。暗転を繰り返して、ページのかけたパラパラ漫画みたいになるんだけど、ブラックスワンのクラブシーンとかシティオブゴットのパーティシーンみたいに、とてもサイケデリックで目に悪そう(褒めてる)で脳汁が溢れた.
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