TaichiShiraishi

THE BATMAN-ザ・バットマンーのTaichiShiraishiのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

OPの「アヴェ・マリア」が流れながらののぞき見シーンや、暗闇のなかで機関銃がさく裂する引きの美しいショット、ゴッサムシティの荒廃しきった雰囲気などは実によくできていて、かっこよかったのだが……。どうも要所要所の演出が締まらなかったり、話として冗長な部分が看過できない。作り手たちはバットマンであれば、観客に細かい説明なしでも受け入れさせ、ストーリーにいろんな要素を盛り込みに盛り込みまくっても大丈夫、と過剰に信じすぎていないだろうか。

そもそも前からバットマンが協力者であるゴードン署長にブルースとしての正体を隠す意味は何だろうと思っていたのだが、今回のバットマンスーツのまま捜査現場に居合わせる絵面の間抜けさでそれがより気になってしまう。警官たちも明らかにいぶかしがっていたが当然だろう。捜査現場の最高責任者も正体を知らない謎のコスプレ男を招き入れているのだから。

おまけにストーリーも3時間もあり、それに無駄がないとはとても言えない。バットマンの出生の秘密やキャットウーマンの父親との因縁は、どっちかは次回作以降の話にしてよかったのではないか。いろいろ盛り込んだ挙句、肝心のリドラーが30分くらい放置プレイを食らっていたのもいただけない。もともと1作限りのつもりらしいがやはり詰め込み過ぎだったと言えるだろう。

予告にもあるペンギンのカーチェイスもあんな被害を出してまで追いかける意味があったとは思えないし、最後のとある「人命救助」シーンも紐を斬るシーン含めて大仰な割に大したことしてないし、1年くらいは活動しているはずなのに市民やマスコミにバットマンが認知されていなかったのもおかしいし、そもそもあんな大都市のすぐそばにあんな事態になりかねないものがあるのもおかしいし、と変なところを言い出したらきりがない。

アクションやキャットウーマンのかっこよさは買いたいし、音楽ももう少しバリエーションは欲しかったがジアッキーノは手堅い仕事をしている。またポール・ダノの童顔のまま邪悪さをたたえた表情は素晴らしかった。「取り調べ」の場面はどうしても『ダークナイト』と比べてしまうが。

いろいろ言いつつ最後まで飽きずに見ることはできた。ただ長いし、必要な尺だったとは思えない。
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