emily

普通の家族のemilyのレビュー・感想・評価

普通の家族(2016年製作の映画)
4.7
マニラの路上で暮らす16歳のジェーンと17歳のアリエル。二人には生まれて間もない子供もいる。ストリート・チルドレンの彼らは、スリや泥棒で生計を立てなんとか生活している。しかしある日強引な甘い誘いにのってしまい、子供が誘拐されてしまう。なんとか子供を連れ戻そうとあらゆる手段で奮闘する。

防犯カメラの映像から始まる冒頭。そこには音は流れず、時間だけが刻まれていく。そのまま同じリアルな映像に切り替わる。本作では監視カメラの映像を随所で挿入することで、彼らの一部始終を観てる観客を証人と言う立ち位置までのしあげてくる。

ドキュメンタリーとドラマの狭間で、観客を傍観者という場所に収めず、常に参加させ、巻き込んで来るので、ひとときも目を離せないし、離せる隙もない。

二人は見た目で判断され、子供を誘拐された被害者でありながら、まるで加害者のように扱われてしまう。その描写に至っては、みるに耐えない心をえぐられるような警察の対応が批判的に挿入され、その部分には防犯カメラの切り替えがないのだ。記録されてないからこそ、観客の目を記憶だけが頼りになる。

普通の家族というタイトルが全てを物語っている。ここにあるのは、確かに道で子供を育て、汚い環境で、認知すらされてない無知な親の姿である。しかし子供にとって、家族にとって一番大事な物はしっかりあるのだ。

失くしてからの彼らの行動に愛や思いやり、お互いを尊重する気持ちの全てがある。それは新しい命を持つことで、守るものができたことで、子供により親へと成長させられた強い信念である。

「普通の家族」とは地位や名声やお金ではない。家族が家族であるために、大事なものが備わっているということである。
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