ちろる

汚れたミルク/あるセールスマンの告発のちろるのレビュー・感想・評価

3.8
これは実際にあった「ネスレボイコット」を元にした巨大グローバル企業の悪とその不正を暴き告発を試みたセールスマンの正義の物語といった簡単な話では終わらないモヤモヤ感があるけどそれこそがリアル。
それでも池井戸潤的な挫折と奇跡とそしてまた挫折とを繰り返す展開のテンポの良さは映画作品とし見応えがありました。

不衛生な水の貧困の地域に粉ミルクを売りつけるグローバル大企業ネスレ社(作中ではラスタ)
家族のために国産企業を離れ高給のグローバル企業に就職したトップセールスマンアヤン
そしてそのアヤンからの粉ミルクを貧困地域の乳幼児に勧めた医師。
そもそもこの構図で一番悪いのは一体どこだ?
利益のために地域性考えずに販売エリアを拡大するだけの企業か、セールスマンでありながら自分がどのような内容のものをどこに対して販売してるのか細かく知らなかったアヤンなのか、それとも母乳よりもこの粉ミルクを不衛生な水しか飲めない貧困層の乳幼児に飲ませた医師なのか。

もちろん巨大な資金力で政治的にアヤンを亡き者にしようと企み、しらを切り続けたネスレが一番恐ろしいのだけど
医師は最初に異変に気付き、アヤンに問題提起して信念を持ってアヤンと共に戦う決意をしたとはいえ、初段階において免疫力をつきにくい貧困層の乳幼児に母乳ではなく粉ミルクがありだと思ってしまったという知識の無さに私は驚愕してしまった。

家族と離れ離れになる覚悟で正義を持って戦おうとしたアヤンの勇気とそれに伴う苦しみは計り知れないし、この彼の告発による犠牲がその後の子どもたちの多くの命を救ったのは間違いないわけで、そのヒーローぶりには頭は上がらない。
後半はミスチルの「HERO」って歌が頭の中で流れてきたのは私だけじゃないはず。
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