つるみん

わたしたちのつるみんのレビュー・感想・評価

わたしたち(2016年製作の映画)
4.0
【だから友達がいないんだよ】

学校でいつも一人ぼっちだった11歳の少女ソン。次学期から来る転校生のジアとたまたま出会い、そこから2人は仲良くなる。しかし新学期が始まると2人の関係が変化していき…。

秀作。
小学生のいじめ、スクールカースト、家庭環境の格差などをリアルに描き、そんな状況下で11歳ながら戸惑い、葛藤しながら成長していく子供たちの姿を映したヒューマンドラマ。

OP、ドッジボールの人選決めのシーン。しかし映されるのは主人公ソンのクロースアップ。いつまでも選ばれない彼女は、既に無理して作られた笑顔が垣間見え、そしてその作り笑顔すら消えてなくなる瞬間を長回しで捉える。そういった機微を逃さず撮り続けているのは本作の特徴。どんどん惹き込まれていく。

仲間外れにされる悲しさと苦しさ。
友達ができた時の喜びと楽しさ。
裏切られた時の怒りと虚しさ。

小学生ながらそれらを経験するのは余りにも酷ではないか?いや小学生の時にそれを経験しておいた方が良いのか?

イジメを扱う映画というのは、ある程度酷いイジメの描写を見せる事によって、いじめられっ子側の気持ちに寄り添わせるものが多いが、酷いイジメの描写(靴に画鋲とか個室トイレで水かけるとか)ほど自分の世界には無かったものなので〝映画的〟と思い〝作り話〟とどうしても感じる事が多い。
しかし本作では、黒板に悪口を書かれるというような演出が一部あったくらいで、仲間外れというものをリアルに映していた。

友達だと思っていた人が離れていくあの心配が膨れ上がる感じ。悪い予感は当たってしまうというのも分かる。裏切られたから裏切る、でも繋がりは欲しいという小学生の気持ち。これもめちゃくちゃ分かる。

さらに本作は家庭環境にも焦点を当てていて、そこが原因でやってくるイジメというのは勿論現実に存在するであろう。アルコール依存症の父親、放っておく母親、友達に殴られる弟。ソンの居場所は…。

疎外される気持ちをドッジボールの外野に行かされる描写とリンクさせる巧さ。それをOPとEDに違う形で映すのだから、これはもう映画としても巧妙と言わざるを得ない。

次作の『우리집』 も観てみたい。
つるみん

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