困った佳品。
ソン役の主演少女(の顔演技など)がすばらしすぎる。顔立ちももう、ツルツルと清らかで、日本人と全然変わんないわけだし……。……カメラがずっと接写で行くもんだから、私たちは彼女を不憫に愛しく思い続ける。アルコールの入ってた私なんかは、最初の6分ぐらいでもう泣き始めた。
でも、いじめを取り扱った脚本の、〈取り扱い注意〉性が、すなわち“危うさ”が、後半になるとグログロと悪趣味なぐらいにでんぐり返ってしまった。
親友になりそこねたジアが、モンスター化しちゃったのだ。
ジアのもろもろの言動の動機は、まあ、わかってあげられるんだけれども、やっぱ、悪い意味でグロいよ。最大の転換点になっちゃった新学期初日のソンへのジアの仕打ちは、(形としては他愛ない方かもしれないけど)精神的暴力としては凄まじいレベルだったから、その時点で観客の私たちは「そんなやつ(ジア)にはキレてやれ! 絶交!」と見限る。だけども、ソンはといえば、愛想尽かすでもなく恨むでもなく、以後もジアに恋々とする。
いじめカーストのそんなイライラッとさせまくる下位二人を、わりと愉快に踏みつける(魚みたいな名前の)ボラ。しかし、映画自体がその頃になるとモンスター。よりひどい言い方をすれば、“みんな、何らかの精神疾患”。
う~~ん、……監督さんには申し訳ないけど、ラストでべつにソンとジアに和解してほしいなんて私たち観客は願ってなかったからね。
(女子三人で観に行ったんだけど、全員、そこんとこの感想は一致してた。「やられたらやり返さなきゃね。まさかガキ(弟)に非暴力を語られるとは……あれはまずい」が一名。「ああいう顔と雰囲気の女の子で四年生だったら、クラスにきっと彼女に恋してる男子が一人か二人はいるはずで、その男子が守ってくれないってのはおかしい」が一名。最武闘派の私の結論は、「ボラのグループも仲間割れして、バトルロワイヤルってのがいい」。)
それでも何でも、やっぱり演技&演出がすぐれてガチ。この少女世界、リアリティーはせいぜい六割程度なのに。
比べてヤングアダルトの魚住直子あたりを私は読み返したくなった。過剰アクセントなしの“困らない描破”とは何かが再確認できそうで。(もちろん、魚住小説にも玉・石あり。)