きっこ

わたしたちのきっこのレビュー・感想・評価

わたしたち(2016年製作の映画)
4.5
線引き


パンフレットの背中越しの二人の画と、一人きりのショット。
そして、終盤での正面からの画。
心に刻まれています。

ケモノから人になり、思春期をむかえるこどもたち。みんなママとパパが大好き。
大人は大変なことがたくさんあっても、そこはやっぱり忘れちゃいかんのよね。
見のがしてしまうことはあるけれど、
大人の一人として、見守れる人でありたいと思います。

そして弟君の一言。
収められる矛を持つ人こそが、本当の強い人。貧乏くじも引きやすいけど。
知恵がついて足の踏み合いをしてしまっては拉致があかない。だけどこれは難しい‥。世の情勢にも言えると思います。きな臭くなってきて、話が通じにくいことあるし。

最後、クレジットの曲が流れはじめて
一気に感情が溢れてしまい、トイレへ。
寄り添いつつも、的確な距離感。
進んで推すのはためらいますが、
94分に込められた映像、機会がある方には体感してほしいな。


追記) 分断の時代と是枝さんと小津さん

ユン・ガウン監督の机には小津さんと是枝さんの写真が貼ってあるそう。
カズオ・イシグロさんの記念講演の言葉と共に、
日本という国や文化の影響について考えるきっかけになりました。
ユン監督の言葉を借りると、
「昔は容姿や性格などをからかうということが多かったと思うのですが、最近は、家族のことや経済的な価値で個人の資質を評価することがあり、よくない傾向です。」
とのことですが、日本ではこういう傾向は随分前からあった気がします。
今後の日本国を懸念しつつ、来年は、そんな憂いを言葉ではなく、映像で語る日本映画を見たいなぁ。

東京フィルメックスで観客賞。批評家受けはそこまで、というのはわかる気がします。
ですが、個人的には新旧含めて今年のマイベスト1。

「シナリオの初稿段階では、大げさな事件を入れて映画的な面白みを入れるようにしていましたが、イ監督ににせもののようだといわれ、改稿しました。教室で起きているけれど、ニュースにはならないような小さなことでも、子供にとっては波及力のあるエピソードを描きました」(映画.comより抜粋)
とあるように、奇をてらったり大げさではなくても、
身近な題材で、丁寧に、映像を紡いだ作品は人の心を打つ。オースティンの小説を読むように、折に触れて再見したいと思います。

(映画生活投稿分2017)