MasaichiYaguchi

仁光の受難のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

仁光の受難(2016年製作の映画)
3.7
第17回東京フィルメックスで鑑賞。
この映画祭ではアジアの新進作家の最新作が数多く上映され、「映画の未来」を垣間見させてくれる。
映像作家・庭月野議啓さんが4年の歳月をかけて製作した本作で描かれるのは“大人のお伽話”。
本作ではタイトルにあるように、主人公である修行僧・仁光が遭遇する受難を幻想的に描いていく。
仁光が受ける“難”は女難。
彼は女性を異常なまでに惹き付けるオーラというかフェロモンを発していて、そのモテぶりは凄まじいばかりだ。
現代では妻帯者の僧侶は普通だと思うが、映画の舞台となっている時代では、僧侶にとって女犯(女性と関係すること)は大罪であり、禁じられていた。
仁光は自分の意志に反して猛威を奮う女難を避ける為に人里を離れたり、隠棲しようとするのだが、逃げれば逃げる程“難”は執拗に彼を追い掛けて付きまとう。
彼が逃亡の果ての村で出会うのは、男の精気を全て吸い取ってしまう「山女」というラスボス。
この妖怪退治を村長から道中で知り合った素浪人と共に頼まれた仁光は、「山女」のいる山奥へ向かうのだが…
この“大人のお伽話”とも、色っぽい怪異譚とも言える本作は、VFXやアニメーションも交えて斬新且つ絵画的映像で繰り広げられていく。
上映後の監督を交えたティーチインの中で、この作品で使用されたVFXやアニメーションは監督自身が製作したことや、総製作費が1千万円であったことが明かされ、内心かなり驚いた。
今年は邦画が活況だが、ハリウッド映画に比べ、有り得ない程少ない予算で水準の高い映画を作り出していく日本映画の底力の一端を本作を通して感じた。