河

裏階段/裏梯子の河のレビュー・感想・評価

裏階段/裏梯子(1921年製作の映画)
4.0
メイドと郵便配達員という社会の裏側に生きる2人が中心となる。メイドは雇われている家へ裏階段を通して行き来しており、メイドへの手紙は配達員によってその裏階段から届けられる。

それに対して、メイドを雇っている人々やメイドの恋人は表側に生きる人々として照明が強く当てられている。そのような人々は2人からは窓に映る影として見えるようになっている。

裏階段、2人の部屋を含めて基本的に黒いセットで画面も暗く、メイドが恋人に会うのも常に夜となっている。2人は窓の先にある光の当たる表社会に出ることができない。

メイドの恋人が現れなくなったことをきっかけに、その恋人からの手紙を届けておりメイドに恋をしていた郵便配達員との関係性が生まれる。そこに、メイドの恋人が現れる。この時、外にいるメイドとメイドの恋人に光があたり、2人が実像と影に分裂する。それが表社会と裏社会の狭間に2人がいることを示す。

メイドの恋人はそれまでメイドの家、裏側の世界に入り込むことはなかったが、配達員との関係性に気づいたとこで入り込むようになる。そして、配達員との騒動の後配達員によって殺される。表社会の存在が裏側の世界に入り込み、その世界の存在によって殺される。

その事件によって表社会の人々の目がメイドと配達員に向けられるようになる。メイドは雇い主によって仕事を辞めさせられる。その裏社会からも除外される。そして、表社会の衆目の元、メイドは自殺する。

表社会から見られない密室的な社会として、メイドと配達員の住む裏側の社会、裏階段が存在し、その社会からはマジックミラーのように表社会が見えている。本来起こり得ないはずの表社会の存在によるその裏社会への干渉により、その二つの世界が衝突し、裏社会が表社会によって見られるようになる。その後また、表社会は自身から裏社会を見えないようにするように感じられる。

表と裏を光によって切り分けるというシンプルな演出を続けた後、クライマックスで非常に象徴的なショットが一気に連発される。
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