chiakihayashi

ヘヴン・ウィル・ウェイトのchiakihayashiのネタバレレビュー・内容・結末

ヘヴン・ウィル・ウェイト(2016年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

『奇跡の教室〜受け継ぐ者たちへ』のマリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督の渾身の新作。イスラム過激主義に洗脳される少女たちと、我が子の変貌に愕然とする親たちの苦悩を、綿密なリサーチに基づいて描いたフランス映画。
 チェロを独り奏で、この世界の不公正に胸を痛める16歳の少女を、SNSで接触してきた青年が籠絡する。空爆下のシリアの動画などを見せて〝聖戦〟の意義を説くと同時に、赤毛の髪や白い肌を褒めることから始めて、ロマンスの幻想へと引き込んでいく。彼女を「未来の花嫁」と呼び、遂には神と自分にだけ従うよう誓わせるのだ。生真面目な分、内省的でもあれば孤独でもある少女のやわらかな心に食い入っていく手口は巧妙で怖ろしいほど。
 並行して、シリアへの渡航に失敗した17歳の少女が、この問題に長年取り組んできた教育者のDounia Bouzar(本人が出演)の導きで自分自身を取り戻す過程が描かれる。AA(アルコホリック・アノニマス)に倣ったという自助グループでイスラム教徒になった少女たちとヴェールについて語り合う場面のBouzarの存在に瞠目させられる。文化人類学者でもある彼女の鋭い分析と洞察、そして温かで揺るぎのない共感の力に。彼女には常時ボディガードが付いているようなのだが。
chiakihayashi

chiakihayashi