KnightsofOdessa

愛の喪失/ネヴァー・エヴァーのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

2.5
[ブノワ・ジャコー版『ア・ゴースト・ストーリー』?!] 50点

まさかブノワ・ジャコーが本家より先に『ア・ゴースト・ストーリー』を撮ってるとは思いもしなかった。金欠自己中映画監督が長年の恋人をあっさり捨てて若いパフォーマーに走り、自宅に連れ帰ったら変な音がするという不思議な映画。無駄にカメラ動かしまくったり、ありえないところでカット割ったり、やたらバイクの移動ショット撮ったりと決定的なショットから逃げている感じがして、映像は基本的には火力不足。主演のジュリア・ロイは最高に可愛いので、金欠自己中映画監督マチュー・アマルリックが死んでからが個人的には本番なんだが、如何せん台詞を小難しくしてくるので眠い。シーケンスの変わり目で一瞬にして時間が何年も経っていたのには確かに『ア・ゴースト・ストーリー』ぽさがあり、家に死んだ旦那の幽霊が取り憑いているという幻想もその感覚を助長する。しかし、それは自分の中の旦那であり自分自身の鏡像であり無であるという現実…というくだりまでは良いんだが、小難しく台詞を展開する割にストレートで(しかも美しくはない)、この手の映画特有の粘着性が乏しいのは否めない。これだ!みたいなタイミングでそれっぽい音楽がかかって、ロイがドヤ顔で煙草を吸うシーンがあるんだが、端的に言って意味不明すぎて吹き出してしまった。どういうことやねん、と久しぶりに画面に突っ込んでしまった。

でもやっぱり、ブノワ・ジャコーは女優を選ぶのだけは上手い。というか、好みが非常に近い。ジュリア・ロイはジャコーのヴェネツィア映画祭記念短編にも登場していて、一分間彼女が睨むだけの映画ながら、こちらは生涯ベスト短編の一つとなっている。
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