MasaichiYaguchi

ザ・ティーチャーのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ザ・ティーチャー(2016年製作の映画)
3.9
第29回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門上映作品。
いじめ、モンスターペアレント、学級崩壊と、これらの問題に直面したりする弱い立場の日本の教師のことを考えると、本作に登場するような女性教師はPTAや教育委員会から指弾されて、日本では一発で罷免されると思う。
この映画の舞台は1980年代のチェコのとある小学校。
この小学校のあるクラスに一見優しくて仕事熱心な女性教師が赴任してくる。
彼女は新学期の最初の授業で生徒に自己紹介をさせるのだが、その際に親の職業まで言わせていく。
このことが伏線となっていて、彼女のモンスターぶりが徐々に頭をもたげていく。
本作では彼女の凄まじいまでの職権濫用によって生徒だけでなく、その親たちまでも巻き込まれ、振り回されて疲弊していく。
何故一介の教師がこれ程までに権力が揮えるのか?
それは彼女が共産党員であったから。
チェコスロバキアは1948年から共産党の一党独裁制の社会主義国となり、1989年のビロード革命で共産党政権が崩壊するまで続いた。
やがて、この共産党員の教師の横暴ぶりに“実害”が出てきた一部の親が立ち上がって保護者会が開かれるのだが…
国も時代も、政治体制も違うが、こうした弱者と強者の構図や、長いものには巻かれよという風潮は、何処の社会でも、いつの時代でもあると思う。
そして、こうした厚顔無恥な輩はゴキブリの様にしぶといものだということを、シニカルなラストを観ていて感じた。