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blank13のmのレビュー・感想・評価

blank13(2017年製作の映画)
3.7
借金まみれの生活、さらに失踪と家族に多大な迷惑をかけて、家族にとってはどうしようもない大嫌いな父親の知られざる姿が、葬儀の参列者の話から明かされていく。

参列者は通常運転の佐藤二朗がだんだんまともに見えてくるぐらい全員キャラが濃くて、お葬式なのに笑ってしまう場面も多かった。
映画の中盤からは「故人との思い出を話す」ということが大半なのに、ダレることなく見せているのがさすがだった。

少し意味は違うけど、自分が死んだ時に、泣いてくれるよりも自分のことを思い出して笑ってもらえる方が幸せかもしれないと、「横道世之介」を見て思ったのを思い出す。


どんなにダメな人でも、その人の優しさに触れることができた人もいて、ある人にとっては命の恩人かもしれない。
お葬式とは故人のためではなくて残された人のための儀式だと何かで聞いたけど、確かにそうなのかもしれない。
参列者がまばらで小ぢんまりした葬式をこちらがやっている隣のお寺で、同じ名字の別人の大規模な葬儀が行われている…というシーンがあるのだけど、人数で故人の価値を比べることはできないなと思った。

ただこの話は、単に綺麗な話で終わらせることはできない。というのは、父親の知らなかった一面を知ったからといって、またそれを今まで自分が知らずに父親を嫌っていたことに気づいたからといって、失踪してからの13年間残された家族がしてきた苦労を考えると、純粋に「お父さんは実は良い人でした!ハッピーエンド!」というわけにもいかない気がする。
それがこの作品の絶妙なところだったと個人的には思う。
喪主の挨拶で高橋一生が涙を堪えながらも発した言葉が「よく分からないけど、なんか良かったです」という感じだったのが、それを表していた。

最後お母さんが家でタバコを吸ってるカットがめちゃくちゃ好きだった。
そしてそこに被さって入ってきてそのままエンドロールにつながる、その主題歌がハナレグミの家族の風景(の笹川美和カバー)なんて聞いてないぞ〜(情報不足なだけ)
これはずるい。めっちゃ良い!
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