きまぐれ熊

ゲット・アウトのきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

ゲット・アウト(2017年製作の映画)
3.8
面白い

文学性のある上品なテーマの使い方だ
差別に対するアンチテーゼとかって生真面目な視点じゃなくて、当たり前に日常としてある“おかしなこと”でシニカルに笑わせるタイプのホラー

特筆すべきは狂人を描き出すキャラクター造形の上手さ
サイコパスを演出する引き出しをいっぱい持ってそうで、同監督のアスも気になってきた

あらすじとしてはシンプル。
白人の彼女ローズの家のパーティにお呼ばれしたクリス。単純な差別だけでなく、なんかヤバそうな空気を感じてローズを連れて逃げようとするが時すでにおすし...
どんでん返しもそうパンチあるわけではなく、プロット自体はベタなホラー。
素材よりも味付けの上品さで勝負といった感じの作品

差別あるあるネタでグイグイ引っ張りつつ、後半はそれだけではないホラー展開に移行していく
だけど、差別ネタをただのフックに済ませていないのがオシャレなところ。

この映画の最も凄いところはそれなりに差別に対する教養を要求されるところ。
つまり、この映画の怖さを理解している時点で、「貴方は差別が当たり前のものとして受け入れている側なんですよ?」って事を透明なナイフで観客に突き立ててくる。勿論、言語化はしていないけど、教養のある人程、このナイフは深く突き刺さるんだよね。
監督の出自がコメディアンと知って納得というか、消費者に対する恐るべき洞察力だな〜って感動した。

最終盤のシーンでの「これ完全に詰んだわ...」ってシーンが最もリアルな緊迫感があって、これが本作で本当にやりたかった事なんじゃないかと思う
黒人だからこそのピンチがテーマも絡めて的確に表現されている

一応本作内でも前振りとなるシーンが補足として序盤にあるけど、このヤバさは分からない人は分からないかも
ピンとこなかった人には「ファルコン&ウィンターソルジャー」が同じテーマを濃密に掘り下げてるのでオススメしたい
きまぐれ熊

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