きよぼん

ゲット・アウトのきよぼんのレビュー・感想・評価

ゲット・アウト(2017年製作の映画)
3.5
コミュニケーションが苦手な自分のような人間にはとことん怖い映画。

黒人のクリスは白人の恋人ローズの実家で終末を過ごすことになる。そこでパーティが開かれるが、出席者は黒人のクリス以外はみんな白人。オバマのことだとか、恵まれた体格のこととか、現代社会で黒人は有利か不利か?など微妙な話題が続く。

黒人の君との間に壁なんかないからこういう話題を出すんだ、というようにもとれるけど、どうにもデリカシーがないように感じたり、皮肉なんじゃないだろうかと考えて居心地が悪くなるクリス。やっかいなのは相手がとてもフレンドリーで笑顔だということでしょう。

笑顔っていうのは親しみをもてる面もあるけれど、一方でとてもやっかいな感情表現だと思うのです。まずもって相手の本当の考えがわからない。本当に親しみをもっていてくれればいいけれど、ホンネをうまく包んだ攻撃でもあるわけです。そして笑顔で相手に攻め入る理由を与えさせない防御でもあります。それだけに疑いやすい人は自分の中に疑心暗鬼がどんどん高まっていったり・・・て、そう考えるのは自分が他人とのコミュ苦手だからですかね。

さらには一緒に笑うっていうのは仲間かどうかの確認でもあります。映画の中では楽しそうにしてる白人の輪になかなかはいれないクリス。こういうことって日常にあります。地元の集まりに一人だけ違う自分が参加して、みんな共通の話題で笑ってるのに自分一人だけ笑えないで仲間外れ状態とか。そういうときって「一緒に笑えないオマエは仲間じゃないぞ」「仲間になりたいなら一緒に笑え」って言われてるみたいで怖いんですよねえ。いややっぱ自分のコミュ力不足ですか。きっとなんも考えずに一緒に笑って流せばいいんでしょうけれど。

映画のテーマとしては黒人差別ということでしょうが、自分にはその部分はあまり受け取れず、どちらかというと新しいコミュニティに参加するときの恐れを描いた映画として受け取りました。

黒人のクリスが白人のパーティに参加するのと同様に、田舎に引っ越したり、就職したり、PTAに出席したりするというのは、他人が関係性をもって生活をしてるところに自分が入っていくということになります。そこには自分とまったく違う考え方やしきたりや価値観があるやもしれず、うまくやっていけるかどうかの恐怖って誰にもあると思うのです。

だからコミュニケーション能力不足な自分にはとっても怖かった映画です。笑顔でフレンドリーなやつにはやっぱり裏があるんや!
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