とても丁寧に、分かりやすく作られたホラーサスペンス
冒頭の黒人が謎の覆面野郎に誘拐される長回し
主人公とその白人彼女が彼女の実家に向かう道中で鹿を跳ね殺す場面
そしてその実家に仕える黒人の使用人たちの貼り付けたような表情の不気味さから
この作品はこういうテーマでやっていきますよという
明確なプレゼンテーションを見て取れます
分かりやすくするというのは
ある種"あざとく"演出するということ
この作品は"あざとい"伏線を張り巡らせる
それが確信犯的だと分かるからこそ
制作の余力を感じさせます
ヒットさせるということを念頭に置いたときに
この"あざとさ"は必要不可欠なものになるのだから
敢えて云えば
展開の意外性はそれほどありません
が
黒人差別というものを複合的な角度から捉えながら
黒人が白人と比較して有する優位的な気質と
その反面で奴隷として白人に使役されていた過去の歴史と
その羨望と軽視の二律背反的な関係性を上手く突いた作品と言えましょう
前述した優位性が身体能力なのだとすれば
本作が興味深いのは
敢えて黒人である主人公を
そういった身体的優位性で勝負している人物ではなく
フォトグラファーとしての芸術的気質を有した人物として描いている点
これは人種という近視眼的なカテゴライズの不毛さ
偏見の孕むミスリードを描いているとも捉えられます
そういった意味でも
全ての米国民の上に立った黒人としてのオバマ元大統領はアイコニックな存在として作品の中でも言及されています
しかしこの作品のインテリジェンスとは
そういった人種の問題を主眼に置くのではなく
あくまでもストーリーテリングのツールとして利用している点に他なりません