マクガフィン

ゲット・アウトのマクガフィンのレビュー・感想・評価

ゲット・アウト(2017年製作の映画)
4.0
白人の恋人の実家を訪ねた黒人青年が恐怖体験する物語。

黒人やマイノリティ側が感じるような、差別まではいかない違和感を積み重ねてストレスが増幅し、何とも言えない湿気を含んだような不穏な空気が作品に重く漂う。
「空気」はアメリカ社会の人種差別や複雑なマイノリティを根底としたテーマ。作品の不気味さと恐怖をシュールなユーモアで調和するバランス感覚は絶妙で、変化していくテイストと意表を突くプロットに唸らされる。

自称リベラルの振る舞う欺瞞に基づき、アメリカの実態を徐々に炙り出す。
結局リベラルかどうかは自分ではなく周りが判断することで、リベラルを自称するなら、偏った理念ではなくリベラルを定義してから行動しないといけなく、多様性を伴うリベラルの対極の概念を疑いながら、深遠な道理のリベラルに基づくのでは。

序盤の事故対応のパトカーの伏線と全ての差別や偏見が集約して呼応するような終盤のシーンは秀逸で、瞬時に人種の違いによる社会の対応の違いを描写した映画ならではの演出にゾッとする。

警察のアフリカ系アメリカ人に対する行動は今も変わらなく、今なお続く多様な差別や偏見を逆手に投影した演出の上手さと、スリルとサスペンスとミステリーをふんだんに含んだプロットに瞠目させられる。