あまのかぐや

ゲット・アウトのあまのかぐやのネタバレレビュー・内容・結末

ゲット・アウト(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

写真家の黒人青年クリス(ダニエル・カルーヤ)は、恋人の白人女性ローズ(アリソン・ウィリアムズ)の実家に招かれる。彼女の両親は歓迎してくれたが、彼女の弟、使用人、そして「ある会」に招かれた客たち。すべてが「どこかおかしい」…。

一度、まったく情報をいれないまま映画館で見て、後半のほう「え、え、え?」と混乱したまま終わってしまったので、ちゃんともう一回見たいと思っていたら、ロードショウが終わってしまった。

レンタル開始したので改めて。オチを知ったうえで冒頭から観ると、改めて「真相」への伏線が素晴らしい。クリスの家に向かう朝、パンをえらぶローズの目つきにさえ「おおこれは」と思えてしまう(関係ないだろうけど)。

鹿、警官、使用人たちの風貌・しぐさ、父親の言葉、母親のことば、客たちのことば…すべてに「おおこれは」(考えすぎ)。

ジャンルとしては「ホラー」なんでしょうか。そこからして説明がつかない。一筋縄ではいかない脚本も、とても好みの「気持ち悪い映画」。もう、どこから何がどう狂ったのか、なにを信じてきたのか分からなくなってくる。

堂々たる体躯のハンサムなクリスが、ローズに一家に対して、終始、怯えているような、遠慮のような、あの居心地悪げななんともいえない表情。きっとこれは黒人であれば、わかりすぎるほどわかるのだろうけど、観てるモノに感情移入させるのに一役買ってると思う。

そしてタイトルの「ゲットアウト」が絶妙に効いてる。「白人の一家に乗り込んできた黒人青年に向けての言葉」とおもって観ちゃうじゃないですか。

身体能力、性的能力、耳や目など感覚の分野含め、自分より強い、優れた資質への憧れ、そして怯えなど。黒人をたてるようで、逆差別的であり、またその裏返しで、黒人に対する、白人(黄色人種もいたけど)の、ひねた憧憬も同時に描いている。「すき」とか「きらい」とか「わかる」とか「わからない」とか「差別いかん」とかいう以前。異人種どうしが混在して住まう社会に生じた複雑なお互いへの感情が、なんとなくわかる。

基本的に最近はCGなどでどこまでも「怖い映画」は作れるけど、普通の人物のことばや目線、雰囲気がただただ恐怖感をあおり、人間どうしが「お互いに向ける目」の不気味さを、極端ながら、よく描いている。極端な部分はコメディアンという監督のサービス精神とみることにしましょう。

ただ、それだけに猟銃を使って「皆殺し風」ラストはB級映画のバタバタっぽくてちょっと興冷めしたけど、すべてが終わって、そのシーンを俯瞰すれば、白人の家に押し入り家族を惨殺して逃げ出した黒人の姿。…おお、これは…(ぞっ)。

わたしは観ていないけどソフトには別エンディングがいくつかあるようです。本編ではクリスの親友のガードマンが駆けつけますが、もしこれが白人警官が乗ったパトカーが来ていたら…。これがダメ押しで、この光景に最後の「ゾクっ」が来ました。

オットは、親友の最後のひとこと「ミッション完了」というのが気になるといっていました。「え?もしかして(いけすかない白人一家皆殺し)ミッション?ってこと?」…いやいやいやそれは考えすぎでしょう。

ローズの弟役のケイレブ・ジョーンズって、「スリービルボード」の看板屋の青年だ!昨年の話題作、網羅してるなぁ。え、X-menのバンシ―!?
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