みなりんすきー

ゲット・アウトのみなりんすきーのレビュー・感想・評価

ゲット・アウト(2017年製作の映画)
4.3
『だから行くなって言ったろ?』

『まるで人生は悪趣味な冗談さ』

『私の望みはもっと深い』

『”だから言ったろ” それが言いたくないから黙ってた』


■ あらすじ ■
アフリカ系アメリカ人の写真家クリスは、恋人ローズの両親へ会いに、2人で郊外にある彼女の実家を訪れる。ローズの父親は神経外科医、母親は精神科医で弟も優秀な医学生という家庭で、かなり裕福であった。実家の使用人には黒人ばかりを雇っているが、父親は差別主義者ではないと誇張する。
訪れた翌日、毎年開いているパーティが開催されることが分かり、クリスも仕方なく参しローズと共に挨拶に回るが、どうにも不気味な客人ばかり。誰と話しても妙な違和感だけが残る。居心地の悪さに耐え切れなくなったクリスは、帰りたいとローズに話すが…


■ 感想 ■
『ゲット・アウト』
(『Get Out』)

公開当初よりかなり話題になっていた今作、やっと鑑賞。
なるほど、確かにこれは面白い!!非常に濃密な100分だった。内容的にも、引っ張ればもっと引っ張って130分くらいにしてもおかしくはないような話なんだけど、とにかく無駄なシーンは全て排除し、とにかく必要な情報のみ視聴者に与え、そのまま無駄なく隙間なく見事にスマートにラストのオチまで持っていっている。全く退屈しなかったのはその絶妙な分配のお陰でしょうね。
ぶっちゃけ正直言うと、これに似たような映画はこれまでに観たことがあって、(タイトルを出してしまうと深刻なネタバレになってしまうので書きませんが)真相が分かった時には、正直、そこまでの驚きはありませんでした。なんなら、「あぁ〜ハイハイそれね、例のそれ展開なのね」くらいの感想で、確かに驚きはあるんだけど、経験がひとつあるだけでだいぶ衝撃度が下がってしまうんですよね。なのでこの高評価はその衝撃度とかオチが読めなかったとかそういう点に対してではないのです。
じゃあ何がそんなに良かったかって、とにかくね、もうね、”最初から最後までとにかく徹底された閉鎖的空間の不気味さ”!!この演出がとにかく巧み。上手過ぎる。それは映画全編を通して全ての要素に理由があって、撮り方、人々の言動、表情、音楽、とにかく全て。全てが、不気味さ、気持ち悪さ、そしてそれが募りに募って気付いた時には大きな恐怖に変わっていくんです。ああ、これは完全に完璧なるホラー映画だなぁと。
しかもその不気味さの演出っていうのが、ただ観客にそう感じさせる為だけではなくて、きちんと全てに意味を持たせているんだよね。この映画において、”意味のない言動はひとつもない”んですよ。これは本当に凄い。前述した一切無駄のない構成っていうのはまさにこれのことで、全ての人間の言葉、表情、とにかく全てのシーンに意味がある、つまり見事なまでの”伏線”というわけです。全てがね。それがあまりにも見事すぎて、圧巻でした。オチの衝撃どうこうよりも、その無駄のない計算され尽くした構成がお見事すぎて、観終えた後は開いた口が塞がらなかった。
おデブ友人がとにかくいいキャラだという点についてはもうそのままの意味なので特筆はしませんが(笑)、持つべきものは友ですね、本当に。あと携帯ね。笑

ネタバレ一切厳禁なのは当たり前ですが、その上でちょっとキーワードを出すとすれば、

『強さ』
『頭部』
『視線』

こんな辺りですかね。頭部に関してはまじで分かんなかったな、言われてみれば描写あったんだよなぁ。ほんとうに描き方が上手過ぎる。
気持ちが明るくなる映画では決してないけれど、もう1回観たらそれはそれで違う楽しめ方ができるタイプの映画ですね。いやぁ、面白かった。
余談ですが、今回BD鑑賞で本編観終えたあとホーム画面を放置していたら、流れていたBGMが途中からめちゃめちゃ怖くなってちょっとビックリしたので、これから観る人は是非最後まで聞いてみてください。笑 細部までこだわりがすごい、ほんとに。