凛太朗

ゲット・アウトの凛太朗のレビュー・感想・評価

ゲット・アウト(2017年製作の映画)
4.6
これはヤバイ!久々に傑作ミステリー/サスペンス、ホラーに出会えた!そんな気分。
凄く理性的な主人公クリス(ダニエル・カルーヤ)は、サッカー選手で言ったらチェルシー所属のスランス代表、エンゴロ・カンテみたいや!と何故か思ったね。
優れた洞察力で事前に危機を察知し、冷静に摘みとる。

単純に白人による黒人差別をホラーで描いた作品かというと、中々そんなに単純なものでもないですよね。まぁだから妙な緊迫感や人間の怖さが浮き彫りになってる気もするんですけど。
クリス君、白人の彼女の上流階級である実家行くにあたって、「ちゃんと両親に彼氏が黒人だって言ったか?」みたいな感じで、大なり小なり不安感があるわけですけど、まぁ当たり前と言えば当たり前ですよね。白人は黒人を差別するっていう認識は未だに世界中のあちこちで共通認識としてあるものです。そんなことは杞憂だと言われてもね、歴史やら何やらが生み出したコンプレックスとしてあっても仕方がないと思うんですけども。
そこで思うんですが、じゃあクリスは白人様をどういう目で見てんのか?ってことです。
白人は黒人を差別するものだ!っていう逆に偏見の目で見てないか?と。
そういう目で見てるから、クリスは白人様の中で凄く居心地悪い。上流階級であるが故に、黒人を召使いとして使ってますし、そんなのを見るのも嫌だし、逆に見られるのも嫌でしょう。
クリスの気持ちはなんとなくわかりますねぇ。私も中卒且つ、バンドやってた故に金髪の長髪で、嫁さんの親に「娘さんをください!」って言いに行きましたけど、物凄く不安でしたし、未だに嫁さんの方の親戚の集いの中に行くのが凄く怖いです。
そんなことは置いといて。
クリスの潜在的な自分が黒人であるって思いや、白人に対する気持ちが見て取れるので、凄く緊迫感や不安感が出てて怖いですね。勿論、召使いたちが不気味だとかいう単純な怖さもありますけど。

ほんで、クリスのコンプレックスもわかるんですけど、この映画の白人様方、黒人をまるで汚物を見るような、典型的な差別意識とは違う描き方をしていて、白人のコンプレックスや黒人に対する憧れからサイコなものを描いてるんですよね。
そして何やるかって、ビンゴ大会と称した競り市が始まるわけです。お笑いにしてもブラックすぎて笑えない。キューブリックかよと。

キューブリックと言えば、『時計仕掛けのオレンジ』でルドビコ心理療法という名の洗脳をアレックスに行ったりしてますが、この映画でも催眠術を使って洗脳が行われてますね。
催眠術にかかってしまった黒人たちは、自我を失い、魂が抜けたみたいな不気味な状態になって、意識は地の底へと落ちて行き、まるでぼんやりとテレビでも観ているかのように現実世界の傍観者みたくなってしまうわけですが、これも大概ヤベー描写だなと思いましたね。
こんなんそれこそ、マスメディアやSNSに侵食される現代人そのものの姿じゃねーかと思いました。

ということでこの映画は、単純に何かを肯定したり批判するといより、色んなことに対して警鐘を鳴らした傑作やと個人的には思います。
凛太朗

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