デヴィッド・リンチのアートワークを思う存分見ることができる。
彼の半生にひどく興味があった。あれだけ狂った映画を作り続けた精神性はどこからきたのか。何をきっかけに独創的になったのか。とにかく知りたかった。
しかし、どれだけ語られても、デヴィッド・リンチが”普通の人”であることが強調されるばかりで、本質を捉えることはできない。
裕福な家庭に生まれ、母親は彼の芸術的才能を開花させてくれ、父親とは芝刈りをする。絵を描くのに夢中で門限を破って父親に怒られた、というエピソードを話すくらい平凡だ。
それでも印象に残ったのは、ロバート・ヘンライの『アート・スピリット』について語るシーン。
「夢中になったよ。内容はほとんど忘れたが、当時は持ち歩いてた。アート・スピリットを生きるアート・ライフとは、コーヒーを飲み、タバコを吸い、絵を描く、それだけ。女性との関係も多少あるが、基本は創作の喜びをひたすら極める生き方だ」
何に影響を受けたかについて語ってもらった方が、よっぽど彼を知ることができたと思う。
本作でひとつ分かったことは、デヴィッド・リンチは芸術を信仰してるということ。