カルダモン

デヴィッド・リンチ:アートライフのカルダモンのレビュー・感想・評価

3.8
「新しいアイデアに過去が色をつける」

いい言葉だなと思った。

デヴィッド・リンチは映画監督であるまえに、アーティストなのだという認識を、改めて決定づけるようなドキュメンタリー。

廃墟のようなアトリエのテラスで陽光を浴びながら、作品制作に取り組むリンチは自然体そのもの。絵の具を混ぜたり、塗り込んだり、ハリガネを曲げたり、タバコをふかしたり、曲を作ったり。イメージを吐き出す行為は排泄行為のようなもので、アートは生きている=ライフそのものなんだろう。誰に頼まれているわけでもない、ひたすらにイメージと向き合っていく作業は映画製作とは真逆とも言えるが、リンチの場合には一貫してまず強烈なビジョンがあるので、明確な線引きはないように思える。

それでも監督業から退いたのは、映画製作にまつわるしがらみが面倒になったんだろうと想像する。プライベートで映像を撮り、繋いでいった「インランドエンパイア」には、そんな自主制作の主張を感じる。
そして2017年、カルトの帝王というレッテルさえ跳ね除けるように「ツインピークス」が復活。輪をかけてイメージの大洪水が噴出し、歯止めというものがなければここまで行けると、イマジネーションの復権を見た。